骨度法の基準と人体各部位の解剖学的呼称【取穴で使う用語】

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 今回はツボの取穴で使う用語として、人体の方向に関する解剖学的呼称や体表指標、骨度法の基礎知識と基準をお話ししていきます。

解剖学的なお話

 基礎用語を話すためには、最低限、解剖学で用いられる人体の切断面や各種方向に関係した用語の理解が必要となります。ですので、まずはそのお話からしていきます。

人体の切断面(必要なもののみ紹介)

・解剖学的に正しいとされる肢位→直立した姿勢で、掌(手掌)を前に向けた姿勢

矢状しじょう面→身体を正面から射抜くように、前後方向の水平線を含む面

正中せいちゅう面→無数にある矢状面のうち、身体を左右に等しく分ける面のことで、1面しか存在しない

 また、この面と身体表面との交点『正中線』といい、腹側が前正中線、背中側が後正中線となる。

 これは督脈(後正中線)と任脈(前正中線)のラインである

 

方向

・『内・外側』→2つの構造のうち、正中面に近い方を内側ないそく、遠い方を外側がいそくという

(例)上肢の場合→外側を『母指側ぼしそく』や『橈側とうそく内側を『小指側しょうしそく』や『尺側しゃくそくと表記することがある

・『せんしん』→2点のうち身体表面に近いものを浅(外)、中心に近いものを深(内)という

・『じょう』→直立した姿勢においての上下のこと

・『ぜん』→直立した姿勢で身体の前面(胸や腹など)に近い方を前、後面(背中側)に近い方を後という

・『近位きんい遠位えんい』→上肢や下肢に主に用いられるが、体幹に近い方を近位、遠い方を遠位という

参考:解剖学的肢位と人体の方向(中心を通るのが正中線)

 

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取穴の基礎用語

体表指標

 体表指標は、経穴部位を理解するための身体各部の目印のことです。

 解剖学を知らない方でも何とか理解していただけるように、かなり噛み砕いた表現で説明していきます。

『頭部』

前髪際ぜんはっさい中点→前髪の生え際の真ん中を指す

後髪際こうはっさい中点→後ろ髪の生え際(えり足のあたり)の真ん中を指す

額角がくかく→前髪際の生え際の角を指す

・眉間→両方の眉毛の間を指す

耳尖じせん→耳を前方へ折り曲げた時にできる耳の頂点の部分を指す

 

『体幹』

・第2肋骨

 →胸骨角の高さにある肋骨。胸骨角きょうこつかくは胸部の経穴を取る際の指標となる

胸骨角→胸骨は胸骨柄・胸骨体・剣状突起と分かれているが、このうち胸骨柄と胸骨体の結合した部分を指す。両鎖骨の間の『頚切痕けいせっこん』の凹みから下へ指を撫で下ろすと出っ張りに触れるところ

・第4肋間

 →乳頭の高さ

・第7頚椎けいつい棘突起きょくとっき

 →頸部後正中線上で最も隆起している棘突起で、首を左右に動かすと動くのがわかる

棘突起→背骨を触ると凸凹しているのがわかると思うが、その出っ張りをいう

・第3胸椎きょうつい棘突起

 →直立姿勢で両手を体幹につけたとき、後正中線と両肩甲棘けんこうきょく内端を結ぶ線の交点。または第7胸椎棘突起が取れれば、その4つ上の棘突起になる

・第7胸椎棘突起

 →直立姿勢で両手を体幹につけたとき、後正中線と両肩甲骨下角かかくを結ぶ線の交点

肩甲骨下角→肩甲骨最下部の先端

・第12胸椎棘突起

 →直立姿勢で両手を体幹につけたとき、後正中線と肩甲骨下角と、左右の腸骨稜ちょうこつりょう最頂点(ヤコビー線)を結んだ中点の高さ

ヤコビー線→腰の経穴を取るための重要な指標で、腰の外側から内方へ、腸骨に沿って触れていくと取れる。第4腰椎棘突起の高さとなる

 

『上肢』

腋窩えきか中央→腋の中央部

・腋窩横紋前端→上腕部と腋の境目の前端。後端もある

肘窩ちゅうか横紋→肘関節を90度曲げたときにできる横紋

しゅ関節掌側しょうそく横紋→手首を掌側に曲げて、尺骨と橈骨の茎状突起けいじょうとっきの遠位端を結ぶ線上にできる横紋。2本以上横紋が出るときは最も遠いものを選ぶ。また、手の甲側に曲げた背側はいそく横紋もある。こちらも取り方は同じ

赤白肉際せきはくにくさい→掌と手の甲の皮膚の移行部、もしくは足の底と足の甲の皮膚の移行部で、両者ともに色が変化する場所。

私は学生時代に講義をしてくれた先生の呼び方に倣って、『表裏の境目』きめとも呼んでいます

爪甲角そうこうかく→爪甲角内側縁および外側縁と爪甲基底部が作る角のこと

 

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参考:各横紋と爪甲角

肘窩横紋(赤い丸のところ)

手関節掌側横紋(赤線のところ)

手関節背側横紋(赤線のところ)

爪甲角(赤い点のところ。手と足の各指ごとにある)

 

『下肢』

殿溝でんこう→殿部と大腿後側の境界にできる溝のこと

大転子だいてんし頂点→大腿骨にある大転子の頂点。なお大転子は体表からも触れられる

外果尖がいかせん外くるぶしの頂点(体幹から見て最遠位)

内果尖ないかせん内くるぶしの頂点(こちらも最遠位)

 

骨度法の部位と長さの基準値

 ここからは、以前にお話したことのある骨度法の部位と長さの基準とされている値の一部をお話します。

 長さの測り方は、これも以前お話した『同身寸法』です。

 これを基に、実際にご自身の体で骨度法の寸法を取ってみてください。思うよりも長さが合っていて、最初は驚くかもしれません。

 それから今回、初めて当サイトのコンテンツを読んだという方のために、骨度法と同身寸法について簡単に触りだけ載せておきます。

 

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骨度法こつどほう』とは

 人間の体は個人ごとに大きく差が出るため、ツボの位置も各個人で違いが出る。

 このことから、『骨格』を基準として個人の寸度を定めたものをいう。

 

同身寸法どうしんすんほう』とは

 骨度法は正確であるものの、長さをその都度測らなければならず非常に不便。

 そこで簡便法として、『その人物の手指』を用いて長さの尺度とすることにしたもの

 詳しくは、こちらをお読みください。

 

『頭部・顔面部』

・前髪際中点〜後髪際中点→1尺2寸(12寸)

・眉間〜前髪際中点→3寸

・両額角髪際がくかくはっさい間→9寸

・両乳様突起にゅうようとっき間→9寸

乳様突起→耳の裏側のやや下(耳たぶの裏あたり)にある出っ張りのことで、胸鎖乳突筋が付く

 

『胸部・腹部・季肋きろく部』

・頚切痕〜胸骨体下端→9寸

胸骨体下端は、みぞおちの手前くらいまでのところ

・胸骨体下端〜臍中央→8寸

・臍中央〜恥骨結合上縁→5寸

・両乳頭間→8寸

 

『上背部』

・左右の肩甲骨の内縁間→6寸

 

『上肢』

・中指尖(中指の先端)〜手関節横紋→8寸5分

5分は1寸の半分の長さ

・腋窩横紋前端または後端〜肘窩(肘の窪み)→9寸

・肘窩〜手関節横紋→1尺2寸(12寸)

 

『下肢』

・恥骨結合上縁〜膝蓋骨しつがいこつ(膝のお皿)上縁→1尺8寸

恥骨結合上縁は臍中央からの長さを参考に位置を割り出す

・膝蓋骨尖〜内果尖→1尺5寸(15寸)

脛骨内側顆けいこつないそくか下縁〜内果尖→1尺3寸(13寸)

・脛骨内側顆下縁〜膝蓋骨尖→2寸

脛骨内側顆は膝関節内側で触れることができる

・大転子頂点〜膝窩しっか(ひざ裏)→1尺9寸(19寸)

・殿溝〜膝窩→1尺4寸(14寸)

・膝窩〜外果尖→1尺6寸(16寸)

・内果尖〜足底(足裏)→3寸

・足指尖(足の指の先端)〜かかと(足底部)→1尺2寸(12寸)

 

おつかれさまでした

 以上で取穴を始めるための基礎用語の解説は終了とさせていただきます。

 次回は本格的に、要穴の取穴部位についてのお話を予定しています。

 それではまた次回、お会いしましょう!

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