五臓の肺の持つ機能とは?肺に関係する身体の部位も合わせて解説!

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 今回は前回同様、五臓の肺の持つ機能と肺に関係する身体の部位について解説していきます。

五臓の『肺』

 『肺』は胸腔内で心臓の両側に位置し、形態としては蜂の巣状の構造を呈しているとされていて、五行では『金』に属しています。

気を主(つかさど)り、呼吸を主る

【概念】

 肺は気の生成と全身の気の流れの調節に関わっていて、呼吸によって気体を交換するための場所になっています。

この肺には、実に様々な重要な役割があります。

 

【生理機能】

1.一身の気を主る(全身の気と呼吸の気を管理する)

 肺から吸入される『清気(天の陽気)』と脾胃が運化(消化吸収)する『水穀すいこくの気(地の陰気)』を組み合わせて、宗気・営気・衛気えきといった気が生成されます。

また、肺の呼吸運動によって全身の気の昇降出入の調整が行われます。これを『気機』と呼びます。

 

2.呼吸の気を主る

 肺はガス交換を行う場所というのは、皆さんもご存知と思います。

 基本的には『自然界の清気』から酸素を吸入し、『体内の濁気』として二酸化炭素を排出します。

 気の生成促進・昇降出入が正常に行われることで人体の新陳代謝が正常に行われます。

 ですのでなんらかの理由で機能が低下した場合には次のようなことが起こります。

 

【異常】

・呼吸機能の失調

 宗気の生成や気の運動に影響します。

 そして肺の機能低下が起こり、最後は呼吸が停止して死に至ります。

 

・気の不足、昇降出入の異常、血の運行障害、津液の運搬排泄の異常

 肺の呼吸運動に異常が起こり、呼吸に異常が出ます。

 

『宣発』と『粛降』を主る

【概念】

宣発せんぱつ

 広く発散し、行き渡らせること

イメージは、ばらまくとか撒き散らすといった感じです。

 

粛降しゅくこう

 静粛・清潔・下降するという意味。

 1つは清気を吸入して腎へ降ろす作用、1つは痰を吐き出して呼吸道を綺麗にするというものです。

ちなみに深呼吸には『腎』の作用も必要と言われています。

 

【生理機能】

 宣発作用には次の3つがあります。

  1. 肺の気化によって体内の濁気を排出。私たちが吐き出す息の中に、これは含まれます。
  2. 脾によって運ばれる津液や水穀の精微(栄養素)を肺気の宣発作用に載せて全身へ散布し、皮毛まで運ぶ。皮毛とは、皮膚・うぶ毛・汗腺・皮脂腺を含めた皮膚表層の形容です。
  3. 衛気を宣発させる作用によってソウ理の開閉を調節し、代謝産物の津液を汗として体外に排出。

 

 粛降作用も3つあります。

  1. 自然界の清気を吸入する。
  2. 臓器の中で最も高い位置にあり、華蓋かがいの臓』とも言われる肺が吸入した清気や、脾が運んできた津液や水穀の精微を下に向けて輸送する作用。
  3. 肺や呼吸道の異物を吐き出して呼吸器を清潔にする。

 宣発と粛降は読んでいただいてわかったと思いますが、2つは相反する関係にあり、正常な生理機能の状況下であれば、互いに助け合って制約しあっています

 

【異常】

・宣発作用の失調

  →呼吸がしにくい、胸悶、咳喘(セキ)、鼻づまり、くしゃみ、汗をかかなくなる

・粛降作用の失調

  →呼吸が浅く速くなる、喀痰(血の混じった痰)、喀血

・両方の機能失調

  →肺気の上逆による喘息

 

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通調水道

 『通』は流通させる、『調』は調節『水道』は水液が運行する通路を言います。

 つまり通調水道とは、水液の散布・輸送・排泄が肺の宣発・粛降作用によって調節されることを言います。

 

【生理機能】

  1. 脾の作用によって水液を上に輸送
    1. 肺の宣発作用で全身へ輸送(散布)
    2. そのうちの一部が腠理の開閉によって、汗として体外へ排出される
  2. 不必要な水液
    1. 肺の粛降作用で輸送され膀胱へ
    2. 腎・膀胱の気化作用によって尿として体外へ排出される

 

【異常】

・宣発作用の失調

  →無汗(汗をかかない)、浮腫(むくみ)

・粛降作用の失調

  →浮腫、小便が出にくい、量が少ない

・水液が流れにくくなる

  →痰飲(水っぽい病理産物)の生成

 

百脈を朝(あつ)め、治節を主る

 『朝』は集合『治節』は管理や調節の意味を持ちます。

 

【生理機能】

1.百脈を朝める

 全身の経脈は肺に集まる

 その全身の血や脈は『心』が統括するが、その運行は気の推動作用によるもの。

 気の昇降運動があることで血もまた、全身へと運送される。

 その昇降運動の気を主るのは肺であり、肺は呼吸も主っている。よって、血の運行も肺の気に依存していると考えられています。

 

2.治節

・呼吸の調節

 規則的な1呼1吸

 

・気の昇降出入を調節

 肺の呼吸運動によって全身の気が動かされている

 

・血の運行の推動と調節

 気の昇降出入を調節することによって、心を助け、血の推動と調節をする

 肺の宣発・粛降作用によって津液の散布・運行・排泄を治めている

『治節を主る』とは、肺の生理機能をまとめたもので、肺の主要な生理機能を高度に概括したもののことです

 

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肺の五行従属

 ここからは肺と同じ『金』に属する人体の五行の分類をお話ししていきます。

 

1.『憂』は肺の志

 憂いは悲しみの感情が変化したもので、人体にも似たような影響を及ぼします。

 憂いや悲しみといった感情は、共に人体に悪い刺激を与え、人体の気を消耗させて意気消沈させます。

 肺が虚している(弱っている)と、憂いや悲しみといった情緒変化が起きやすくなります

 

2.『洟(てい)』は肺の液

 『洟』は鼻粘膜から分泌される粘液のことで、いわゆる鼻水です。鼻の中を潤す作用があり、異常が現れると次のような症状が出ます。

・肺が『寒気』に侵される→透明で水っぽい鼻水

・肺が『熱』に侵される→黄色くネバネバした鼻水

・肺が『乾』に侵される→鼻が乾く

 

3.肺は『皮』に合し、華は『毛』にある

 皮毛は体の表面を覆っている皮膚や汗腺、うぶ毛などです。

ただし、その他の体毛(腋や脛など)や髪はここには含まれないので注意してください

 これらは衛気で温められ、津液によって潤いを得ることで外邪の侵入を防ぐ防壁となります。

 正常であれば皮膚は緻密でうぶ毛に光沢があるように見えます。異常が起きると次のようなことが起こります。

 

・肺気が虚する

 →衛気が行き渡らず精が運ばれない

 →衛気が表を固められない(ソウ理を閉じられないなど)

 →外邪への抵抗力低下によって、カゼをひきやすくなったり皮膚がカサカサになる

 

・皮毛から外邪が侵犯

 →ソウ理が閉じて衛気が滞る

 →肺気に影響が出て、肺気が行き渡らなくなる

 

4.鼻に開竅する

 鼻と喉はお互いに通じていて、肺に連絡しています。

 肺気が作用することで嗅覚を感じたり声を出すことができ、肺気が調和することで嗅覚が敏感になり、声が明瞭になります。

 鼻や喉から肺に外邪が侵入すると肺に病変が起こり、鼻づまりや鼻水、クシャミや喉の痒み、声のかすれなどの症状が現れます。カゼのような症状ですね。

カタカナで『カゼ』と表記するのは、東洋医学には『六淫外邪(風・暑・湿・燥・寒・火)』というものがあって、その中の1つに『風邪(ふうじゃ)』というものがあるためです。

 

おつかれさまでした

 以上で五臓の『肺』編については終了とします。

 少しでも皆さんのお力になれていれば幸いです。

 次回は『脾』についてのお話をしたいと思います。

 それではまた次回、お会いしましょう!

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