今回も引き続いて、五臓の脾の持つ機能と関係する身体部位を解説していきます。
五臓の『脾』
そもそも脾って何?
五臓の『脾』は横隔膜の下にあるとされていて具体的な形態は不明、五行では『土』に属します。
西洋医学でいう『脾臓』とは異なっていて、西洋医学では卵形で腹腔左上部、胃の後方にあって横隔膜に接する位置にあるとされています。
しかし第10肋骨の付近にあるため、普通であれば体表からは触れることはできません。
なお脾臓は血液の濾過装置として働いています。
様々な説はありますが、東洋医学の『脾』は西洋医学の『脾臓』と『膵臓』を合わせたものと考えると良いでしょう。
これには理由があって、杉田玄白が『ターヘル・アナトミア』を『解体新書』と訳す際に、当時の医学であった東洋医学で使っていた名称を使用したからとされています。
また、その際に脾の文字には『卑しい』という意味があると考え、その重要な働きから『萃まる』という意味の『膵臓』と名付け、そばにあったものを『脾臓』としたとする説があるためです。
では次から、『脾』の機能を見ていきましょう。
脾の生理機能
『運化』を主(つかさど)る
『運化』とは簡単にいうと消化吸収と栄養素の運送のことを示しています。
水穀(飲食物)を精微(栄養素)に変えて、その栄養物質を全身に輸送する機能です。
合わせて水液も吸収・輸送し、吸収された栄養素から余った水分を取り出して肺や腎に運び、気化作用によって汗や尿として排泄します。
この機能に異常が起きると次のようなことが起こります。
1.水穀の運化機能失調
→唐泄(便が希薄になる。下痢のようなもの)、食欲不振、倦怠感、消痩(痩せてやつれる)、気血の生化不足
唐は正しくは『氵』がついたものになります。変換できませんでした。
2.水液の運化機能失調
→水液が体内に停滞し、病理産物を生成(湿・痰・飲、浮腫)
『昇清』を主る
『昇清』とは、水穀の精微などの栄養物質を脾の気によって上昇させることを言います。
五臓の『脾』と六腑の『胃』は表裏一体の関係となっていて、それぞれ相反する作用を持っています。
脾が清いものを昇らせて、胃が濁ったものを降ろすのです。
そして脾が昇らせた栄養物質は心肺の働きで気血として生成され、全身に栄養を行き渡らせます。
このことから、『脾は昇をもって健とする』という言葉もあります。
この機能に異常が起こると次のようなことが起こります。
1.脾の気が『清』を昇らせない
→水穀が運化できず気血が生成できない
→元気がない、めまい、腹が張る、下痢をする
2.脾気が陥下する(昇らない)
→慢性の下痢や脱肛→内臓下垂
『統血』を主る
血が経脈中を循環するように統括して、脈外に漏れるのを防ぐことを言います。
この機能は気の固摂作用によるものとされています。
異常が起きると次のようなことが起こります。
・脾の運化機能減退
→気血生成の源がなくなる→気血が不足→気が不足することで固摂作用が弱まる→出血
『脾』の五行従属
ここからは脾と同じ『土』に属する人体の五行の分類をお話ししていきます。
1.『思』は脾の志
思考や思慮のことで、精神活動の1つです。
思いは心から出て、それに脾が応じます。ですのでやはり、『思』も『心』と関係があるのです。
思慮が深すぎたり、思いが遂げられないと次のような異常が起こります。
・気血の正常な運行に影響
→気滞、気鬱→脾の昇清に障害が出る
→食欲不振、膨満感、めまい
余談ですが、これは私も実際に経験があります。
高校受験の頃、自分の偏差値よりもやや高い隣町の学校を本命の志望校にしていました。
受験が近づくにつれて、元々、心配性な性格のこともあって不安や様々な思いが強くなり、食事が喉を通らなくなったのです。
結果としては、無事に志望校に合格でき、元どおりに食事が摂れるようになりました。
2.『涎』は脾の液
『涎』とは『口津』であり、唾液中の清い水様のものを指します。一般的に言う『ヨダレ』のことです。
口腔粘膜を保護して口腔内を潤す作用を持ちます。食事を摂ると分泌量が増え、嚥下(飲み込み)と消化を助けています。
正常な場合は唾液は口には上がりますが、口外には溢れてはきません。
ですが脾胃の不和が起こると唾液の分泌量が急激に増加し、口から涎が溢れることがあります。
3.体は『肌肉』に合し、『四肢』を主る。
脾と胃は気血を作り出す源になります。
全身の肌肉は脾胃で運化させた水穀の精微で栄養されることで、豊満で丈夫になることができるのです。また、栄養が行き渡ることで四肢も正常に動かすことができます。
もし運化機能に障害が出たとすれば、次のようになります。
・身体が痩せ衰えて軟弱無力
・四肢の栄養不足により
→倦怠感・無力感→四肢の萎縮
ここで言う『無力』とは、『ああ、俺はなんて無力なんだ・・・』というようなメンタル的なものではなく、単純に『力が入らない・入れにくい』というような状態を指します
4.『口』に開竅する
これは味覚の状態を指したものです。
運化機能が働き、脾の昇清と胃の降濁が上手く働いていれば、味覚と食欲が現れます。
では、運化機能に障害が起きてしまうと・・・?
→味がしない、口が甘い、ジトジトする、口が苦い
5.華は『唇』にある
唇の色や光沢から全身の気血の充実度を推し量ることができます。
唇が赤く潤っていれば、気血が充実し、運化機能の状態が良いことを示します。
とすると、芸能人の石原さとみさんはさぞかし、脾の機能が良さそうですね笑
おつかれさまでした
以上で五臓の『脾』に関しての解説は終了とさせていただきます。
少しでも皆さんのお力になれていれば幸いです。
次回は『肝』についてお話しさせていただこうと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
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