五臓の心の相互関係。統括している身体の機能と病変を解説!

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 今回は五臓の心と他の五臓の相互関係について、共同で統括している身体の機能と、異常が起こった際に引き起こされる病変について解説していきます。

『心』と『肺』

1.気血の相互運搬

 『心』は血脈を主り、『肺』は気を主ります(宗気とともに全身の気機を促進)。また『心』と『肺』は三焦の上焦に同居しています。血は気を載せて運び、気は血を推動させることで相互に作用しています。

では、このバランスが崩れてしまうとどうなるのでしょうか?

 心と肺に限らず、五臓は対応する互いの関係によって、互いの状態が身体の変調を引き起こす原因となる可能性を持っています。

 

・病後虚弱、慢性疾患

 →『心気虚』

 →心血は宗気を運搬できず、呼吸障害を起こす

 

・慢性の咳、肉体疲労

 →『肺気虚』

 →宗気の推動作用が低下して血行障害を起こす

 肉体疲労や慢性の咳が続くと、肺気が不足して息切れしたり声が低く出にくくなります。また、気が不足することで粛降作用が働かなくなり胸悶(胸が苦しい)が起こります。これが『肺気虚』です。

続いて肺気虚によって宗気の生成が不足となると、推動作用が低下して心悸(動悸)が起こる『心気虚』となります。

 

 両方の気虚が合わさると『心肺気虚』となり、次のような症状が現れます。

・衛気の固摂作用の減退→何もしなくても汗が出る『自汗』

・気血が行き届かない→顔面蒼白や倦怠感、頭重感

 

この証に対する治療穴の例

・後天の気を補う

 →足陽明胃経『足三里』(後天の気をたくさん生成してもらうため)

 

・宗気を補う

 →任脈膻中』、足太陽膀胱経『肺兪』(宗気を生成してもらうため)

 

・心気を補う

 →手少陰心経『神門』、足太陽膀胱経『心兪』(心気を生成してもらうため)

 

『心』と『脾』

1.血の生理代謝(生成と運搬)

 『心』は血脈を主り、『脾』は気血生化の源で運化と統血を主ります。

 脾は運化作用で血を造り、統血作用で血脈から漏れないように調節を行っています。これには気の固摂作用が関わります。そして心の『血脈を主る』作用(心気の推動作用)で全身へ血を送ります。

 

2.精神活動

 『心』は神を蔵し『神志』を主り、『脾』は後天の精を生み、気血生化の源となります。

 精神活動は心気によって行われ、そのための神は心に蔵されています。そして心血によって滋養されることで正常に活動を行うことができます。

したがって脾は、心神を滋養する心血を造るため、運化によって後天の精を生成し、血を生成します。そうして心血を満たし、神を栄養することで精神活動を行えるようになるのです。

では、このバランスが崩れてしまうとどうなるのでしょうか?

 

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・精神疲労、慢性疾患

 →『心血虚』

 →心血は脾を滋養できず運化の失調や統血困難となる

 

・飲食不摂生

 →『脾気虚』

 →脾気の不足により血の生成が不足、心神を滋養できない

 『心』と『脾』のバランスの変調は『気』『血』の双方が虚証になる複合証です。

 上記のような状態が続くと血の生成不足で心を滋養できなくなり、『心気虚』ののちに『心血虚』を引き起こします。

 『心血虚』になると今度は心血が不足して脾が栄養されなくなり、『脾気虚』を引き起こします。

 

 両方が揃うと『気血両虚』となり、次のような症状が現れます。

・心血虚

  心血不足→心悸・健忘・不眠。顔色が悪い

 

・脾気虚

 運化作用低下→食欲不振・腹脹・倦怠感・泥状便

 統血困難→各種出血・月経過多

 

・この証に対する治療穴の例

・運化作用を強める

 →足陽明胃経『足三里』、足太陰脾経『三陰交』、足太陽膀胱経『膈兪』(気を補い血を養うため)

 

・心気を補う

 →手少陰心経『神門』、足太陽膀胱経『心兪』

 

『心』と『肝』

1.血の代謝(運搬と貯蔵)

 『心』は血脈を主り、『肝』は血を蔵します。

 肝は働くなど、体を動かす時には血を送り出し、睡眠など休む時には推動作用で運搬されてきた血を中に蔵します。そうして血流量を調節するのです。

 

2.精神活動の調節

 『心』は『神志』を主り、肝は『疏泄』を主ります。

 肝の疏泄機能によって血行がスムーズになることで、心神への血の提供と心神の機能がスムーズとなります

 では、このバランスが崩れてしまうとどうなるのでしょうか?

 

・大量出血→『心血虚』

 →心血虚により血の循環ができず、肝血に不足を起こす

 

・慢性疾患(陰血消耗)、精神疲労(営血消耗)、脾胃虚弱(気血生化不足)→『肝血虚』

 →肝血の不足によって血流調節ができずに心血虚を招く

 今回の場合は『心血虚』と『肝血虚』による複合証となります。

 肝の上記のような状態が持続すると、血を消耗し、脾胃も弱って血の生成不足に陥り『肝血虚』となります。

 すると循環させる血の量が不足し、『心血虚』を招きます。

 

 両方が揃うと『心肝血虚証』となり、次のような症状が現れます。

・心血虚による血の不足で、血の循環不足が引き起こされる

 『心』→心悸

 『神』→不眠・健忘

 上焦への推動低下→顔面『白』(顔色が悪い)

 

・肝血虚によって血が不足し、血量の調節不能に陥る

 『目』→目が霞む・痛む

 『頭部』→耳鳴り・めまい

 『筋』→肢体の痺れ・痙攣、爪の変化

 

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・この証に対する治療穴の例

・血を補う

 →足陽明胃経『足三里』、足太陰脾経『三陰交』、足太陽膀胱経『膈兪』

 

・心気を補う

 →手少陰心経『神門』、足太陽膀胱経『心兪』

 

・肝を養う

 →足厥陰肝経『太衝』、足太陽膀胱経『肝兪』

 

『心』と『腎』

1.体温調節(体内の熱調節)と陰陽平衡(心の循環と腎の水液代謝)

『心』は『陽』に属し、『上焦』にあり、性質は『火』。心火=心陽

『腎』は『陰』に属し、『下焦』にあり、性質は『水』。腎水=腎陰

 腎水が上昇することで心陰を滋養し、心陽が亢進し過ぎないように冷やします。また、心火は下降することで腎陽を助け、腎水を冷え過ぎないように温めています。

では、このバランスが崩れてしまうとどうなるのでしょうか?

 

 『心』と『腎』の『心腎相交』が乱れて『心腎不交』となると・・・。

・ストレス、気を鬱して『火』を生み出す

 →『心陽偏亢』

 →心火が亢進し、腎水を煮詰めてしまう→『腎陰虚』

 

・過労、慢性病、房事過多など

 →『腎陰虚損』

 →腎水が不足して心火の亢進を制御できなくなる

 過労や慢性病で腎陰が減ると腎水が不足して心火の亢進を抑制できなくなり、『心陽偏交』となります。

 その火が腎水を煮詰めてしまうことで腎陰がさらに足りなくなり、ついには『腎陰虚』を招きます。

 

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 両方が揃うと『心腎不交』となり、次のような症状が現れます。

・心陽偏交

 心神内乱→不眠・多夢・心悸

 

・腎陰虚

 骨髄不足→足腰のだるさ

 脳髄不足→健忘・耳鳴り

 腎精不足→遺精・夢精(虚火が精室を乱す)

 口渇・五心煩熱(手のひら・足の裏・胸の五ヶ所が熱く感じることで、陰虚の典型)

 

・この証に対する治療穴の例

・心火を降ろす

 →手少陰心経『神門』

 

・腎陰を増やす

 →足太陽膀胱経『腎兪』、足太陰脾経『三陰交』

 

・心腎の交通を促す

 →足太陽膀胱経『心兪』『腎兪』

 

2.血の循環と水分代謝

 『心』の血の循環と『腎』の水分代謝で全身の機能を調節します。(人体陰陽平衡)

 『心陽』と『腎陽』が相互に作用することで、臓腑の温煦・血脈運行・津液の気化が正常に行えます。

 では、このバランスが崩れてしまうとどうなるのでしょうか?

 

・肉体疲労、慢性病、老化衰弱など→『心腎陽虚』

 血の運行減退→チアノーゼ・瘀血

 水液停滞→尿量減少・浮腫

 陽気が虚す→寒がり・手足の冷え

 

・この証に対する治療穴の例

・腎を温め、腎を健康にする

 →任脈『関元』

 

・体内の水の流れを良くして、溜まった湿を流して取り去る

 →任脈『水分』、足太陰脾経『陰陵泉』

 

・腎陽を補う

 →足太陽膀胱経『腎兪』

 

精と血、精と神の関係

『心』は血脈を主り、腎は精を蔵します。

『心』は神を蔵し、腎精は髄を生じ、脳は髄液で組成されている『元神の府』。

血と精は互いに滋養して不足を補い合っています。これを『精血同源』と言います。

このバランスが崩れると、どちらが不足した場合でも不眠・多夢・健忘などの症状が現れます。

 

おつかれさまでした

 以上で五臓同士の関係『心』編は終了とさせていただきます。

 いよいよ『証』も登場し、より本格的に東洋医学らしくなってきたと言えますね。

 少しでも内容を理解いただけていましたら幸いです。

 次回は『肺』編を予定しています。

 それではまた次回、お会いしましょう!

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