今回は身体を流れる少し特殊な経絡である奇経八脈について、その基本的なお話と流注(身体の巡り)がどうなっているかについてお話ししていきます。
奇経八脈って?
奇経八脈とは『督脈』『任脈』『陰キョウ脈』『陽キョウ脈』『陰維脈』『陽維脈』『衝脈』『帯脈』のことで、十二経脈のように表裏関係を持っていないため、奇経と呼ばれます。
気血は基本的には正経十二経脈を巡っていますが、それが満ち溢れると奇形に流入します。
例えるなら河川で水が溢れそうな緊急時に使われる側溝のようなものですが、水が溢れないように溜め込むこともあるため、湖や沼などとイメージすることもできます。
ただし奇経八脈にも対応する病状や流注があるため、一概に側溝のような役割があるだけだと断言はできません。
また、それぞれが独立していて、正経十二経脈のように表裏関係があったり臓腑を纏うことがないという特徴も持ちます。
では早速ですが奇経八脈の流注の紹介に移ります。
督脈と任脈に関しては人体の前後の正中線を通る流注を持ち、固有の経穴がある脈でもあり、実際の治療でもよく使う特別な脈ですので、しっかりと頭に入れておいてください。
督脈
督脈は胞中(小骨盤腔)に起こり、会陰部に出て後正中線上(背骨のライン)を尾骨の先端から腰部・背部・後頸部と上り、外後頭隆起直下に至って脳に入る。
さらに頭部正中を通り、頭頂部(百会)に上って顔面正中部を経て、上歯齦(上の歯茎)・上唇小帯の結合部に終わる。
『陽脈の海』と呼ぶ。
任脈
任脈は胞中に起こり、会陰部に出て腹部・胸部および前頸部の正中線上(臍の中心を通るライン)を上り、喉に至って下顎の正中から下歯齦に至り、顔面を巡って目に入る。
『陰脈の海』と呼ぶ。
衝脈
衝脈は任脈と同様に骨盤腔内の子宮から起こり、脊柱の深部を巡って、前は陰経諸脈と交わり、後ろは陽経諸脈と交わって十二正経の海となる。
そして皮下に巡る衝脈は、鼠径部で胃経の気衝穴から腎経と並んで腹壁を上行し、胸部に広がって巡ってさらに上行して喉へ行き、左右が合流してまた分かれ、さらに上って口唇に巡る。
帯脈
帯脈は側腹部にある胆経の帯脈穴から人が帯を締めるように腰と腹を一周する。
陽キョウ脈
陽キョウ脈は踵から起こり、膀胱経の別脈と言われている。
外果(外くるぶし)の下方にある膀胱経の申脈穴から起こって踵を巡り、僕参穴を過ぎてフ陽穴に行き、ここから大腿の外側を上行して上前腸骨棘の傍らで胆経の居リョウ穴に交わる。
側腹部から腋窩の後部へ巡り、小腸経の臑兪穴で膀胱・小腸・陽維脈と交わったあと、大腸経の肩髃・巨骨穴を経て頸動脈外側に沿って上る。
顔面に行き、胃経の地倉・巨リョウ・承泣穴と交わって膀胱経の睛明穴に行き、さらに上って頭部を巡り、後頸部で胆経の風池穴に至って終わる。
陰キョウ脈
陰キョウ脈は陽キョウ脈と同じく踵から起こり、腎経の別脈と言われている。
腎経の然谷穴の後ろで照海穴から分かれて腎経に沿って上り、交信穴から下腿および大腿の内側を経て陰毛の際に出る。
さらに前胸部のやや深部を上り、鎖骨上窩に入って、ここから頸動脈内側に沿って上り、鼻に入って睛明穴で膀胱経と交わる。
なお腎経の交信は陰キョウ脈の郄穴である。
陽維脈
陽維脈は膀胱経の金門穴から起こり、胆経の後ろを巡って胆経の陽交穴に交わり、ここから大腿外側を巡って側腹部および側胸部を巡り、小腸経の臑兪穴に上って小腸・膀胱・陽蹻脈と交わり三焦経の天リョウ穴に行き、ここで三焦経と交わり、胆経の肩井穴に至って2枝に分かれる。
頭部に上行する枝は、胆経の陽白・本神・臨泣・正営・脳空などの諸穴を巡り、後頸部の風池に終わる。
もう1つの枝はすぐに後頸部にある督脈の瘂門・風府穴に行き、督脈と交わる。
陽維脈は全ての陽経脈と連絡している。
なお胆経の陽交は陽維脈の郄穴である。
陰維脈
陰維脈は腎経の築賓穴から起こり、大腿内側を上って下腹部に入り、脾経の府舎・大横・腹哀穴を経て、肝経の期門に交わり、胸部へ上ってさらに頸部へ行き、咽喉を左右から挟んで任脈の天突・廉泉穴に達して終わる。
陰維脈は全ての陰経脈と連絡している。
なお腎経の築賓は陰維脈の郄穴である。
おつかれさまでした
以上で奇経八脈の紹介は終了とさせていただきます。
次回からは東洋医学の病因論についてお話していきたいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
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