五臓の腎の持つ機能とは?腎に関係する身体の部位も合わせて解説!

スポンサーリンク

 今回が五臓の機能解説編最終回。腎の機能と、関係する身体の部位を解説していきます。

五臓の『腎』

 五臓の『腎』は腰部の脊柱の両側に左右1つずつあり、そら豆のような形をしているとされています。五行では『水』に属します。

 腎には『先天の精』が蓄えられていますが、それは臓腑の陰陽の元であり、生命の源となっているので、腎は『先天の本』と呼ばれています。腎に臓されている精気を『腎中の精気』と言います。

 次から腎の機能を見ていきましょう。

 

腎の生理機能

『蔵生・発育・生殖』を主る

1.『蔵精』を主る

 『精』を貯蔵するという腎の生理機能を指します。

 ここでこれまでに出てきた『精』についてまとめておきます。

 ・『精気』→人体を構成する基本物質。成長発育や機能活動の物質的基礎

 ・『先天の精』→両親から受け継いだ生殖の精。受精した時に備わったもの。

 ・『後天の精』→誕生してから飲食物を摂取し、脾胃の運化によって作られた水穀の精気。臓腑を栄養し、余ったものは腎に貯蔵される。

 

2.『発育・生殖』を主る

 東洋医学では発育について、男子は『8』の倍数女子は『7』の倍数ごとに身体の成長や発育の節目が現れるとされています。それに伴い、徐々に生殖能力も備わっていきます。

中でも最も肉体的に盛んになるとされているのが男性『32歳』、女性『28』歳です。その後は徐々に衰え始めていきます。

 

・腎中にある精気の盛衰

  →人の生・長・壮・老・死を決定します。

 腎中に精気が十分にあるうちは体は成長し活動できますが、衰えてくると老化が始まり、やがて腎中の精が尽きると死に至ります。

 

・腎の蓄えている精気盛衰の判断基準

  →歯・骨・髪と、先天性疾患・発育不良・生殖機能低下・老化

 

スポンサーリンク

 

・腎中の精気の生理効果

 腎陰(イメージは水)→各臓腑や組織器官を滋養し潤している物質。

 腎陽(イメージは火)→各臓腑や組織器官を働かせたり温めたりするエネルギー。

 腎陰と腎陽が互いに制約・依存・利用して、各臓の陰陽バランスを正常範囲に保っています

腎中の精気、腎陽、腎陰の関係性について

腎中の精気は生命活動の源であり、腎陰と腎陽は各臓の陰陽の根本。腎陰と腎陽は共に腎中の精気を物質的基礎としています。なお腎陰は元陰・真陰とも言われています。

腎における陰と陽は、ちょうど火と水が同時に存在するようなものとイメージすると良いと思います。このことから古来より腎は『水火の宅』と称されています。

 

ではこの機能に異常が現れるとどうなるのでしょうか?

・腎陰が虚する(証:腎陰虚)

 →腎陽を抑制できなくなる五心煩熱・潮熱・盗汗(寝汗)・遺精(男性)・夢交(女性)

・五心煩熱→手のひら・足の裏・胸中に熱感があること

・潮熱→潮の干満のように熱が上がったり下がったりする

・遺精→性行為以外で精液が漏れてしまうこと(夢を見ている間なので『夢精』のことを指す。昼間であれば『滑精』という)

 

・腎陽が衰える(証:腎陽虚)

 →温煦・生化作用が不足精神疲労・膝や腰の冷痛・身体の冷え・小便不利・早漏・子宮の冷えによる不妊

 

『水』を主る

 腎は水液を管理しています。腎の気化作用によって津液の輸送散布と排泄を行い、津液の代謝バランスを維持しています。

 また、腎の気化が正常であれば、『開合』も正常に行われます。

開』は代謝によって水液を体外に排出すること、『合』は生体に必要な水液を貯留することを意味します。

 体内の一連の代謝においては常に腎の気化作用が関与し、水液は胃に受納され、脾の運化作用で肺へと送られます。

 そこから肺の散布作用によって全身に行き渡ったあと、六腑の三焦を通って、清いものは臓腑を運行し、濁なるものは尿や汗として体外へ排泄されるのです。

 

スポンサーリンク

 

では、異常が起こって代謝のバランスが崩れてしまうとどうなるのか?

 気化作用が失調すると開合の不利が起こって水液代謝障害が起こります。

  →小便不利・浮腫。また、小便は無色で多量になります。

 これは気化作用の低下によって津液の再利用ができずに全て尿となってしまうためです。

 

『納気』を主る

 『納』とは固摂や受納するという意味です。

 呼吸は肺が主っていますが、吸気は腎に降らなければなりません。

 吸気を腎に納る腎気の働きを『摂納』と言い、この作用があるため、『肺は呼気を主り、腎は納気を主る』と言われます。

 腎気が充実するからこそ、肺への空気の出入りが円滑となって順調な呼吸が可能となります。

 この機能に失調があると次のようになります。

 納気作用の低下→呼吸が浅くなる→すぐに息切れ、呼吸困難

 

腎の五行従属

 ここからは腎と同じ『水』に属する人体の五行の分類をお話ししていきます。

1.『恐』は腎の志

恐れ→予測できる自覚のあるもので、びくびくおどおどした状態

また、腎は驚きも主ります。

驚き→予測できないもので、意識せずに突然受けるショック

どちらも人体にとって不良刺激です。

 恐れが過剰になると上焦の気機を塞ぎ、気が下に追い込まれ、下焦に脹満が現れます。

 驚きが過剰となった場合には生理活動が一時的に錯乱され、心神不安定、手足がまごつき思うように動かないなどの異常が現れます。

 

2.『唾』は腎の液

 口津とも言われ、唾液の中でもねっとりしたものをいいます。水っぽいものは『涎』です。

 『唾』は腎気が変化したものと言われ、飲み込めば腎中の精気を滋養できるとされています。

 従って唾が多く、長い間出てしまうと、腎中の精気を消耗することに繋がります。

 

3.体は『骨』に合し、『骨』を主り『髄』を生じ、華は『髪』にある

 腎は『蔵精』を主り、精は『髄』を生じる作用があります。髄とは『骨』の中にあり、骨は髄によって栄養されます

腎精が充実していると、骨髄を化生するのに十分な源があることになるので、髄によって十分に滋養された骨格は結果的にしっかりしたものになることができます

髄→骨髄、脊髄、脳髄のこと。

骨に覆われていて腎中の精気によってできている。

東洋医学において脳は『髄海』と呼ばれ、頭部に通じた脊柱の髄が集まったものが脳と呼ばれています。

 

スポンサーリンク

 

『歯』は骨余→歯は腎精により栄養されるので、充実していれば歯はしっかりしている。

『毛髪は精と血に養われる』→精と血は互いに養う関係にある。精が多くなれば血も旺盛になる。毛髪に艶があるのは血の働きが旺盛な証拠であり、ここから髪は『血余』であると言われます。

 腎精が虚すると毛髪が白くなったり髪が抜ける他、骨髄を作る原料が不足して骨を滋養できなくなることから、骨格がもろくなったり発育不足を引き起こします。

 

4.『耳』『二陰』に開竅する

1.『耳』

 腎中に精気が十分にあれば髄海は栄養されて、聴覚も鋭敏になります。

 

2.『二陰』

  前陰→外生殖器(排尿と生殖)

  後陰→肛門(排便)

腎の気化作用によって開閉を調節します。

 精気不足で、二陰には次のような病変が起こります。

・腎中の精気が不足してしまうと、髄海を滋養できなくなる。

 →聴力低下・耳鳴り、難聴

 

・腎陽不足の場合

 →気化作用・温煦作用失調により頻尿・遺尿、尿少・尿閉

  温められないことで陰寒が凝結すると、老人などの便秘(冷秘)

  脾胃が温まらないことで夜明けごろの下痢(五更泄瀉ごこうせっしゃ)

 

・腎陰不足の場合

 →腸が潤いを失って便秘

 

おつかれさまでした

 以上で五臓の『腎』に関する解説は終了とさせていただきます。合わせて『五臓』編も終了となります。

 『五臓』の各臓の理解について、少しでも皆さんのお力になれていれば幸いです。

 次回からは『五臓六腑』の『六腑』編に入ります。

 それではまた次回、お会いしましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました