今回は無鉛ガソリンと有鉛ガソリンの違いについてお話しします。
俺、よくセルフスタンドで給油するんだけどさ。
給油口のカバー裏に『無鉛レギュラー』とか書かれたシールが貼ってあるじゃん?
確かに貼ってありますね
じゃあ有鉛もあるの?
見たことないんだけど・・・
有鉛ガソリンはあります。いえ、ありましたと言った方が良いかもしれませんね。昔は普通に使われていたのですが、今では使われなくなってしまいました。
そこで今回はこれらのガソリンの違いと、なぜ有鉛が使用されなくなったのかについてお話しします
有鉛ガソリンとは?
ガソリンの有鉛と無鉛について考えてみたことのある人はどのくらいいるでしょうか。
冒頭でもお話しした通り、現在では『有鉛ガソリン』なるものは販売されていません。ガソリンスタンドでのアルバイト経験のある私自身も、見たことがないのです。そんなわけで以前から、気にはなっていました。
そして今では無鉛ガソリンが主流となっていて、有鉛ガソリンや有鉛プレミアムガソリン(有鉛ハイオク)といったものは過去の遺物となっています。
ですが、かつてはこれが当たり前にガソリンスタンドで販売され利用されていた時代もありました。
1970年代以前は、ガソリンといえば有鉛ガソリンが当たり前。有鉛ガソリンとは、ガソリンの中に『アルキル鉛』を追加したものです。無鉛ガソリンには当然ながら入っていません。
なぜ鉛を入れていたのかといえば、その理由は主に2つ。
ひとつは『アンチノック剤』としての効果です。エンジンのノッキングを抑える効果ですね。
エンジンは高い負荷がかかると『カンカン』『キンキン』といった異音が発生することがあります。これがノッキングで、特に圧縮比の高い高性能なエンジンで起こりやすいとされています。
ノッキングは音が鳴っているだけならまだ良いのですが、あまりに長く続くとエンジンに多大な負荷をかけてしまうことになり、結果としてエンジンの寿命が短くなってしまいます。
ちなみにこれはガソリンスタンドでアルバイトしていた時の私の主観ですが、海外製の車は基本的にハイオクガソリンが指定されていると感じました。ベンツとかBMWとか。
ハイオクガソリンはオクタン価が高いので高性能エンジンでも異常燃焼によるノッキングがレギュラーガソリンに比べて起こりにくいために指定されているのだとか。
つまり外車のエンジンは全て高性能だった・・・?
そしてもうひとつの理由はアルキル鉛が、『バルブシート』というエンジン燃焼室の気密性を保つ部品がバルブと接触することにより磨耗してしまうことを防ぐクッション材になっていたというものです。
なぜ、有鉛ガソリンは使われなくなった?
こうして見てみると、特に何ら車に害を与えることのないように思えてくる有鉛ガソリン。
むしろエンジンにとってはメリットの方が多いようにも感じますね。
ではどうして、使われなくなってしまったのでしょうか?実はそれには、ある事件が関与しています。
1970年に新宿牛込柳町の交差点付近の住民の健康調査が行われた際、住民らが鉛中毒にかかっている疑いがあると民間の医療団体が報告しました。
そしてその原因となっているのが、「ガソリンの排ガスに含まれる鉛である」と主張したのです。
このことをマスコミが大々的に取り上げたため、「鉛を規制しよう!」という風な世相になっていきました。
その後の調査によって排ガスとの直接の関連性はないとの結果が事実として出たにも関わらず、その機運は一向に収まることがありませんでした。
それがやがて自動車の鉛の排出規制などに繋がり、ガソリンは無鉛化され、有鉛ガソリンがガソリンスタンドで販売されることはなくなってしまいました。
これが『牛込柳町鉛中毒事件』と呼ばれている事件です。
旧車はどうしたら良い?
有鉛ガソリンが無くなった今、1970年代以前に生産されたクラシックカーなどの燃料はどうすれば良いのかと気になりますよね?
これに関しては、無鉛ハイオクでも一応は良いとされています。ただし毎日の足に使うのではなく、月1程度のドライブに限るのであれば、です。
それ以上乗る機会があるorエンジンを壊さないよう大事にしたいという方は、無鉛ハイオクガソリンに有鉛用の添加剤を加えて使用するというのも手です。
あるいはエンジンのバルブシートを有鉛用のものから無鉛用のものに換装するという方法もありますが、こちらは大掛かりな作業の上、お金もそれなりにかかるので、資金に余裕のある人向けです。
ちなみに添加剤についてはこのように、今でも入手可能です。
有鉛ガソリンが必要な車に現在乗っているor購入予定のある方は、購入を検討されてみてはいかがでしょうか。
今回のまとめ
有鉛ガソリンが使われなくなった経緯などお話ししました。
昔は当たり前に利用されていたにも関わらず、世論がきっかけになって使われなくなった有鉛ガソリン。
今の時代、無鉛ガソリンというシールなどが給油口のカバー裏などに貼られているのは、その時代の名残と言えるのかもしれませんね。
それではまた次回、お会いしましょう!
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