五臓六腑の関係・概要
人体において各臓腑や器官というものはバラバラに機能しているわけではなく、それぞれが生理機能の面で相互に制約・依存・利用したり、それだけではなく、経絡を通路としてそれぞれの臓腑組織が互いに情報交換し、気血が全身を循環しているという状況下で調和のとれた整然とした状態となっています。
臓と腑は相互に連絡して協調することで生理活動を行い、各腑が行う生理活動を対応する臓が統括するという従属関係になっていて、活動においては関与している臓腑の数が多いほど重要度が高いと考えられています。
気血津液の代謝においても、3つ以上の臓腑が協力して行っており、それら以外においても複数の臓腑が関与するものが特に重要と考えられています。
ではここでもう一度、気血津液の機能について簡単に振り返ってみましょう。
気血津液の生理作用
『気』
1.『元気』
・臓腑の活動や生長発育を促進(生命活動の原動力)
2.『宗気』
・呼吸運動や発声
・心拍運動や経脈中の推動
3.『営気』
・全身を栄養
・血を造る
4.『衛気』
・体表の保護、外邪侵入の防御
・腠理の開閉
・皮毛を潤す
・臓腑組織を温煦し、活動を促進
『血』
・全身を滋養する
・精神活動の基本物質
『津液』
・全身を潤す
・血の成分
『精』→人体の生命活動を支える基本物質。気血を造る元。
『神』→精神活動の総称(精神活動を主宰する)
気血津液の生成代謝
生成
『上焦』
肺で『宗気』生成
『中焦』
脾で『営気』『衛気』生成
『下焦』
腎で『元気』生成
代謝
『上焦』
・血
『心』で循環
・津液
『肺』で発散・下降
『中焦』
・血、津液ともに
『脾』で生成、運搬(運化)
『下焦』
・血
『肝』に貯蔵
・津液
『腎』で排泄、再吸収
『臓』と『腑』の関係
臓と腑の主要な関係には『表裏関係』があり、1つの臓に1つの腑が一対となって連絡しています。
『臓』→『陰』に属し『裏』を主る。五臓から出る経絡は人体の陰側部を巡る
『腑』→『陽』に属し『表』を主る。六腑から出る経絡は人体の陽側部を巡る
臓腑が主る生理作用は、表裏関係にある臓腑が相互に助け合っていますが、この臓腑間には主従関係があり、経絡によって相互連絡しています。
生理活動の中心は『五臓』で、六腑の作用を統括します。『六腑』はそれに従属する形で消化吸収と排泄を行います。
『五臓』が会社の管理職で、『六腑』が下で働く社員と考えると、この関係は理解しやすいと思います。
『心』と『小腸』
主な生理機能
『心』
・血脈を主る→血を推動させる
・『神志』を主る→精神・意識活動
『小腸』
・受盛の官、化物の出るところ→消化吸収
・清濁の泌別→水穀の精微と糟粕に分ける
心陽の持つ温煦作用の働きで、小腸の『清濁泌別作用』を促進
『肺』と『大腸』
主な生理機能
『肺』
・気を主り呼吸を主る→気の生成、全身の気機調節、呼吸
・宣発、粛降→津液・水穀の精微を全身に散布、腠理の開閉、精微を下に送る
・通調水道→水液の散布・輸送・排泄
・百脈を朝め治節を主る→全身の血を経脈によって肺に集め、ガス交換して再び送る作用の調節
『大腸』
・糟粕の伝化→糟粕を便へ伝導変化させる
相互に協調して、呼吸や排便活動を促進
肺の粛降作用が大腸の伝化を助けて排便を促し、大腸の伝化・排便を通じて肺の粛降を助け、呼吸運動を促進します。気の昇降出入の中で、両者の運動方向は共に下降運動です。
『脾』と『胃』
主な生理機能
『脾』
・運化を主る→水穀を精微に変化させて全身へ輸送
・昇清を主る→精微を吸収して上(肺・頭部)に輸送
・統血を主る→血が経脈中を循行するようにコントロールする
『胃』
・水穀の受納・腐熟→水穀を受け入れてドロドロにする
・通降、降を以て和とする→降濁していくことで新たに受納する
脾の運化(運搬と変化)は胃の機能の受納・腐熟を統括して消化活動全般を主る
『脾』は『昇』を以て健とし、乾燥を喜びます。ところが『胃』は『降』を以て和とし、湿潤を喜びます。
このように脾と胃は、相反する働きで1つの機能を行っています。
『肝』と『胆』
主な生理機能
『肝』
・疏泄を主る→気機の調節、運化促進、情志調節
・蔵血を主る→血を貯蔵し血流量を調節
『胆』
・胆汁の貯蔵と排泄→肝で生成され胆に貯蔵され、小腸に排泄されて消化吸収を助ける。疏泄作用でコントロールされる
・決断を主る→肝が巡らせた考えを胆が決断
肝の疏泄作用が胆汁の分泌を調整し、消化を助けている
『腎』と『膀胱』
主な生理機能
『腎』
・蔵精、発育、生殖を主る→精を貯蔵。男『8』の倍数、女『7』の倍数で発育
・水を主る→腎中精気の気化作用で津液代謝のバランスを維持
・納気を主る→特に吸気と深呼吸に関与
『膀胱』
・貯尿と排尿→尿を貯め、排出(尿は津液が変化したもの)
腎気の気化作用で尿が生成され膀胱に貯められ、腎の固摂・気化作用によって貯尿と排尿が調節されている
おつかれさまでした
以上で『五臓』と『六腑』の関係についてのお話は終了とさせていただきます。
ほぼおさらいでしたが、思い出せましたでしょうか?
次回は『五臓』同士の関係について解説したいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
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