2020年現在、毎日のように新規感染者を出し、世間を騒がせている『COVID-19』こと新型コロナウイルス。
これも感染症の1つですが、そもそも感染症とはどういった経歴で人類に認知されてきたものなのでしょうか?
今回は感染症の歴史と、感染症の原因となる病原生物の分類について解説していきます。
人類と感染症の歴史
感染症は、古来では一般的に、悪魔や神、精霊や祟りなど、霊的なものの仕業によって起こされていると考えられていました。
人間以外の動物には、これらの考え方はありませんが、それでも無意識や本能的な行動から、健康を維持するための行動をしようとします。
例えば、暑さ・寒さ、風や雨などから逃げたり、排泄場所を選定したり、身体を清潔にする、などですね。
ではどうして、我々人間だけがこのような考え方を持つようになったのでしょうか?
それは人間の場合は、何故そのような病気になってしまったのか、説明を求める欲求が強かったことに起因します。
これは地球上の生命体の中で我々人類だけが、より高い知能を得た弊害と言えるかもしれません。何かしら理由がなければ納得できないし、安心できないということですね。
皆さんも仮に今、何か病気に罹ったとして、その病気の原因がはっきりしなければモヤモヤした気持ちや不安な気持ちになってしまいますよね?
このように、ある病気に罹ってしまった集団の人々は、医師らの説明に納得することで、心理的にもその集団の一員として留まることができる。
つまり説明を求めたのは、病気の原因がわからないことへの不安の解消と、一種の集団心理への働きかけが期待できたからなのではないか、という風に考えられます。
病気の説明を受けて、自分も他の人と同じく治療あるいは症状への対処が可能ということが分かれば、ひとまず安心できますしね。
ギリシャ・ローマの時代になって、ヒポクラテスやガレヌスといった人物は、病気には様々な種類があること、ある病気は特定の時期や地域に多いこと、病気の原因として暑さや寒さ、空気や水が関係することなどの事実に気づき、これらを文献に記載しました。
少しだけ、近代に近づいた感じがしますが、一方でこのような説もありました。
ガレヌスの瘴気説です。この説は腐敗した遺体やドブから瘴気というものが出て、それが体内に入った時、病気になることがあるとしていました。
瘴気と聞くと、今ではファンタジー系の小説やゲーム、ライトノベルなどで出てきたりしますが、この当時はそれが現実にもあると考えられていたんですね。
16世紀には、梅毒の伝染の解明によって、病気がどのように人から人へ移っていくのかがわかるようになりました。
17世紀にはオランダ人のガラス職人によって高倍率の顕微鏡が製作され、これによって細菌や微生物といった存在を人類は次々に発見できるようになりました。
19世紀になると、し尿の処理や清掃、上水道の整備など生活環境が整えられていくことで感染症の流行を防げるという事実に人々は気づき始め、19世紀半ばのイギリスでは公衆衛生法が確立し、感染症は減少し始めることとなります。
そして17世紀の顕微鏡の発明によって19世紀の終わり頃には細菌学が、より近代的なものとなっていきました。
フランスのパスツールは、腐敗や発酵のメカニズムを解明し、さらには狂犬病の免疫現象の成立を明らかにしています。
ドイツのロベルト・コッホは、家畜の炭そ病とコレラの病原菌を確定。
日本の北里柴三郎は破傷風菌の培養を成功させ、志賀潔は赤痢菌の発見に成功しました。
ここに至ってようやく、感染症は細菌などの病原体によって引き起こされるとする考えが確定され、以後は科学的な方法に則った病気の原因究明が医学研究の主流となりました。
れによって急性の感染症の流行は抑えられましたが、慢性の感染症(結核・性病など)の流行は20世紀半ばまで続くこととなり、人々を苦しめました。
現代日本の感染症
現代の日本では、冒頭でお話しした新型コロナウイルスのほか、インフルエンザや気管支炎、肺炎、肝炎、一部の食中毒、結核、性病、HIVや高病原性鳥インフルエンザなどが主な感染症として挙げられます。
感染症は赤痢やマラリア、インフルエンザなどのように汚染した水や昆虫、あるいは直接ヒトからヒトへ伝染する伝染性感染症と、膀胱炎や破傷風などのようにヒトからヒトへ伝染しない非伝染性感染症の2つに大別されます。
伝染性のものは、以前は簡単に『伝染病』と呼ばれていました。
感染症とその病原生物の分類のやり方は?
感染症は、病原生物による分類、国内の法律による分類、感染経路による分類などで分けられています。
それぞれ大別すると、病原生物は真菌・原虫・スピロヘータ・細菌・リケッチア・クラミジア・ウイルスなどに分類されます。
細菌とウイルスを同じものだと考えている人がいますが、これは間違いです。これらは、その成り立ちからして全くの別物なので混同しないように注意してください
国内の法律によるものでは、1類〜5類感染症、さらに新型インフルエンザ感染症、指定感染症、新感染症などに分類されます。
感染経路は、食中毒・虫や小動物の媒介・性感染症などが挙げられます。
病原生物の大きさや形は?
病原生物の大きさですが、スピロヘータと原虫は赤血球(7〜8μm)よりもやや大きく、真菌はそれよりもさらに大きくなります。
細菌は、多くは0.5〜5μm、リケッチアとクラミジアは細菌よりもやや小さく、DNAやRNAなどからできているウイルスはそれよりもさらに小さく、0.015〜0.15μm程度とされています。
なお、病原生物の大きさを表している上記の単位は『μm(マイクロメートル)』といいます。
これは1000分の1mmに相当しているので、顕微鏡でなければ、まず見ることのできない大きさですね。
細菌の形の基本は、球状ないしはそれを引き伸ばしたような形で、球状のものは球菌、棒状であれば桿菌、らせん状であればらせん菌といい、一部の病原生物には糸状のものもいます。
他にもグラム染色という分類方法が用いられていて、これは陰性と陽性に分かれ、細菌の形状との組み合わせによって分類が決定されます。
病原生物の分類の概要
主たる感染症の詳しい内容については、次回以降に解説しますが、今回はその中でも病原生物によるものについて、簡単にお話ししておきたいと思います。
細菌とウイルスの違いって?
先ほど注意喚起しましたが、細菌とウイルスでは、その組成や特徴が全く異なっています。
・細菌
- 細胞壁を持つ
- 養分があれば単独で増殖できる
- 種類によっては芽胞を形成し、高熱や寒さ、乾燥などの環境変化や消毒にも耐えることができる
- 抗生物質が通用する
・ウイルス
- 細胞壁を持たず、タンパク質でできた殻に囲まれている
- 生きた特定の生物の細胞内でのみ、増殖可能
- 細胞核に自身の遺伝情報を移して増殖する
- 抗生物質が通用しない
真菌・原虫と、その感染症
まず初めに、皆さんは真菌と聞いて何をイメージされるでしょうか?
真菌は、実は皆さんの意外と近くにも存在している、ごく一般的な菌なのです。
ヒント:お風呂場など、家の中の湿った場所に存在します
・・・もうお分かりですね?
正解は、真菌はカビの菌と同じものです。
手足の水虫は『白癬菌』という真菌の感染によって引き起こされています。
それだけではなく、真菌は日和見感染を起こすことでも知られていて、病気で体が弱った時や強力な化学療法を行った時に、皮膚表面などの場所だけではなく、深部の肺や腎臓といった臓器に真菌症を引き起こすことが知られています。
よく知られているものでは、先ほどの白癬菌やカンジダ・クリプトコッカスなどがあります。
では、原虫とはどういった存在でしょうか?
原虫は、単細胞の下等生物であると定義されています。
大きさは数十μm程で、球形ないしは楕円形ですが、偽足という器官を出して活動していて、様々な形をとるとされています。
代表的なものでは、マラリアやトキソプラズマなどがあります。
マラリア
マラリアは日本では発生しませんが、東南アジアや南アジア、アフリカやアメリカなど熱帯・亜熱帯地域で媒介する蚊によって感染・罹患します。
また国内でも、これらの地域に行った日本人が現地の蚊に刺されることによって、帰国して持ち込む例が増えています。
マラリアはヒトに感染すると2週間ほど経ってから激しい悪寒戦慄を持って発病します。
高熱が数週間続いた後、発汗とともに解熱し寛解しますが、しばしば慢性に移行して長期に渡って再発を繰り返します。
トキソプラズマ
トキソプラズマは猫などの小動物の小腸壁で増殖したものが糞便に混じって排出され、汚染された飲食物や十分に火を通していない豚の肝臓を食べた時に感染します。
成人が感染した場合には無症状の場合が多いですが、妊婦に感染した場合は、胎児に影響が及ぶとされ、死産や早産を起こしたり、脳水腫や小頭症・知的障害などの先天性異常を起こします。
リケッチア・スピロヘータ・クラミジアとその感染症
聞きなれない病原生物の名前だと思います。私も鍼灸学校の授業で聞くまでは知りもしませんでした。
唯一、名前だけ聞いたことがあったような気がしたのがクラミジアですね。
リケッチア
リケッチアは細菌とウイルスの中間の性状を持っていて、光学顕微鏡で見える最小の微生物と言われています。
発疹チフスやツツガムシ病といった感染症は、それぞれの種類のリケッチアによって感染します。
感染には、シラミやノミ・ダニ・ツツガムシなどの節足動物の媒介がいずれの場合にもあり、発疹と発熱を伴います。
スピロヘータ
スピロヘータは細長いらせん状をしている微生物で、体がらせん状になっているので、くるくると活発に動き回ることで知られています。
スピロヘータは主なものに梅毒を起こす原因となるものがいて、『梅毒トレポネーマ』といいます。
主として性交によって感染する性感染症で、感染後3週間で症状が現れ始めます。
3ヶ月何もしないでいると、皮膚や粘膜にも症状が現れ始め、3〜5年が経つと、皮膚の潰瘍のほか、内臓や脳にも症状が現れます。
クラミジア
クラミジアは以前は微生物と考えられていた、球状の微生物です。
動物の細胞内においてのみ、増殖することができるという特性を持ち、オウム病、そけいリンパ肉芽種症などの病原体となっています。
感染すると、男性では無症状の場合が多いですが、女性では不妊や流産などを起こします。
最近では性交の低年齢化に伴って、青少年のクラミジア感染が増加傾向にあるようです。
細菌とその感染症
ブドウ球菌
グラム陽性の球菌で、直径は1μmくらい、ブドウの房状に固まっていることから、この名がつけられました。
ヒトの皮膚や気道に常在する菌の一種で、土や水の中にも存在しています。
皮膚に常在する場合には、抵抗力が落ちた時などに、ニキビやできものなどの化膿性の皮膚炎を起こします。
また日和見感染の原因菌でもあり、中耳炎や腹膜炎などを引き起こすことでも知られています。
しかし、ブドウ球菌が原因の感染症で最も多いのは食中毒でしょう。
ブドウ球菌そのものは熱に弱いですが、産生する毒素は熱に強く、菌が死滅することで毒素を排泄します。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、抗生物質に耐性を持っているブドウ球菌で、院内感染によって感染した患者が亡くなることが問題となっています。
レンサ球菌
グラム陽性球菌で、直径はブドウ球菌と同じくらい、数珠状に連鎖し、繋がって見えるためこう呼ばれています。
種々の毒素を産生して感染した場所に化膿巣を作ったりすることで知られていますが、レンサ球菌が原因となる感染症には、丹毒や敗血症、心内膜炎やリウマチ熱などがあります。
肺炎球菌
グラム陽性の双球菌で、柿の種が向かい合う形をしています。
その名の通り、肺炎の原因となる菌です。
淋菌
グラム陰性の双球菌で、肺炎球菌と同様の形態をしています。
性交によって感染し、男性では尿道炎を起こし、起床時に黄色い膿を含んだ汁の排出がみられます。
女性では尿道炎、膀胱炎、膣炎などを起こします。
大腸菌
グラム陰性の桿菌で、大腸腸管内に常在している菌。その数およそ1億〜100億個とも言われています。
手術後や体力が低下したときに、大腸以外の臓器に侵入・増殖し、腹膜炎や膀胱炎などを起こします。
O-157に代表される大腸菌の場合は、ベロ毒素といわれる毒素を産生し、幼児に出血性の大腸炎を起こします。
また、大腸菌の数は、海水浴場やプールの水の汚染度の指標にもなっています。
サルモネラ
グラム陰性桿菌で、大腸菌と形も大きさも似ています。
サルモネラは分類の総称でもあり、腸チフス菌やパラチフス菌なども含まれています。
主に鶏卵を介して、あるいはネズミの糞尿などで汚染された食物を食して感染します。
日本では衛生管理が徹底されているので生卵を食べられますが、海外からするとこれはまずあり得ないようです。サルモネラの危険があるためですね
集団食中毒事件も発生していて、食後12〜36時間で急に発症、発熱・嘔吐・腹痛・下痢を訴えます。
多くは数日で回復します。
赤痢菌
グラム陰性桿菌で、1897年に志賀潔によって発見され、命名されました。
日本では少なくなりましたが、未だ散発的な流行を見せているほか、健康人でも菌の保有者(キャリアー)も多いので、感染源として注意を要しています。
感染から1〜4日で発症し、悪寒・発熱・腹痛・下痢(頻回)を訴えます。
コレラ菌
湾曲したコンマ状のグラム陰性桿菌で、鞭毛があるため非常に活発に活動します。
経口感染で、1〜2日の潜伏の後、急激に発症、大量の米のとぎ汁のような下痢を頻回に起こし、嘔吐と重なって脱水症状を引き起こします。
東南アジアやインドなどの常在地との交流によって、日本にも持ち込まれることがあります。
百日咳菌
グラム陰性桿菌で、1〜2週間の潜伏の後、咳やくしゃみが出始め、引きずるような特有の咳が数週間続きます。
小児が罹患しやすく、3種混合ワクチンで予防します。
破傷風菌
大型のグラム陽性桿菌で、嫌気性菌。土の中や動物の腸管内に広く分布しています。
ヒトのわずかな皮膚の傷から侵入して感染し、毒素を産生します。
地面に落ちていた錆びた釘が足の裏に刺さり、その傷口から感染、などといった例もあるようです。
破傷風菌の毒素は神経毒で、極めて毒性が強く、筋肉の硬直、全身のけいれん発作を起こして死亡してしまう例も少なくありません。
5〜10日の潜伏の後に発症します。
予防にはワクチンを使い、3種混合ワクチンに含まれています。
ボツリヌス菌
グラム陽性の桿菌で、強力な神経毒を持ち、しばしば食中毒を起こします。
食後12〜24時間後に胃腸症状が現れ、続いて視神経麻痺・動眼神経麻痺による眼の症状・えん下困難・発声困難・運動神経麻痺・呼吸困難・循環障害などの症状が現れ、3〜6日で死亡することが少なくなく、死亡率が高い感染症です。
日本では昔から『いずし』による感染が多く、北海道や青森・秋田で見られました。
嫌気性菌(酸素を必要としない菌)のため、真空パックを使っても増殖を防ぐことはできません。
ジフテリア菌
グラム陽性桿菌で、ジフテリアの患者または保菌者の鼻咽頭から飛沫感染で伝染します。
咽頭で増殖し、偽膜を形成。そこから毒素が血中に入っていき、心筋や腎臓、神経系を侵し、重篤な症状を示すようになります。
予防にはワクチンが有効で、3種混合ワクチンにも含まれています。
3種混合ワクチンの内訳の覚え方
『恥も百日』→は(破傷風)・じ(ジフテリア)も・百日(百日咳)
結核菌
グラム陽性桿菌で、アルカリや消毒剤、乾燥に長時間耐えることができます。
反面、アルコールにはやや弱く、紫外線には弱いです。
肺結核患者からの飛沫で感染します。
症状は微熱・体重減少・寝汗から始まり、次第に咳と痰が酷くなります。
慢性感染症に分類されていて、結核は肺だけでなく、首のリンパ節や腸などいたるところに病巣を作ります。
予防として有名なものはBCG(ハンコ注射)の接種です。
日本では明治以降に大流行した国民病でしたが、昭和に入って死亡率は減少し、近年では罹患率も減少傾向にあります。
しかしながら、未だに患者数が一定数以上出ている病気でもあります。
ウイルスとその感染症
アデノウイルス
プール熱や流行性角膜炎などの原因として知られていて、咽喉粘膜の細胞内で増殖します。
他にも、かぜ症候群の原因ともなっています。
かぜの原因となるウイルスには、アデノウイルスのほか、ライノウイルスやコロナウイルスも含まれます。
ですから新型コロナウイルスは、おそらく従来あったコロナウイルスが突然変異したものということになるでしょう。
変異してしまったがゆえに、対処法や根治療法の確立が難しく、感染拡大を抑えることが厳しくなっていると考えられます。
ヘルペスウイルス
口唇ヘルペスやアフタ性口内炎などの原因として知られるウイルスです。
感染すると、神経細胞内で生き続け、免疫力が低下すると再び増殖します。
このため、主として肋間神経のラインに沿って帯状に疱疹ができる『帯状疱疹』が起こり、激しい痛みを伴います。
日本脳炎ウイルス
日本だけでなく、アジア全域に分布するウイルスです。
コガタアカイエカやイエカに刺されることで感染しますが、発症に至るのはごく一部とされます。
ポリオウイルス
急性灰白髄炎の原因となるウイルスで、ポリオ(小児麻痺)を引き起こします。
ヒトからヒトへ、経口感染あるいは飛沫感染します。
咽頭や腸管粘膜で増殖した後、血中に入って、特に脊髄神経細胞を侵し、上下肢の麻痺を起こします。
日本ではワクチンの接種により激減し、根絶まであと一歩のところまで来ています。
肝炎ウイルス
A・B・C・D・E型があるウイルスで、A型は伝染性肝炎と言われ、大便から飲食物や水を介して経口感染します。
B・C型肝炎は、輸血や血清、粘液との接触によって感染します。
A型は大部分は完治しますが、B・C型は慢性肝炎や肝硬変、肝がんに移行する場合が少なくありません。
狂犬病ウイルス
狂犬病に罹っている動物に噛まれて感染・発症する人畜共通感染症で、日本では現在狂犬病はありませんが、海外からの移入が懸念されています。
風疹ウイルス
数年ないしは10年ごとに幼児や学童の間で流行します。
妊娠初期の妊婦が罹患した場合、心臓奇形や先天性白内障などの先天異常が起こることがあります。
2〜3週の潜伏の後、軽い発熱・顔から体幹、四肢へと発疹が広がり、2〜3日で消えます。
生ワクチンの接種が予防に有効ですが、最近では接種率が減少傾向にあるといいます。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
AIDS(エイズ:後天性免疫不全症候群)を引き起こす原因となるウイルス。
リンパ球が破壊されることで免疫不全が起こり、それが原因で発症します。
患者の血液などの体液に含まれ、性交や血液製剤の輸液などのほか、薬物乱用者などでは注射針の回し打ちでも感染します。
胎盤を経ることで母子感染も起こします。
感染した場合には、一時的にかぜのような症状が出ますが、それから数ヶ月〜十数年ののち、免疫力低下で肺炎などの感染症に罹って死亡することが多いといいます。
現在では症状を抑える薬などが開発され、処方されるようになったため、AIDSを必要以上に恐れる心配は無くなってきています。
その他のウイルス感染症
重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱、ノロウイルス、ウエストナイル熱、新型コロナウイルスなど、新しいウイルス感染症が問題となってきています。
細菌やウイルスの潜伏期と発病って?
細菌やウイルスは、感染してから発病または発症するまでに一定の期間を要します。
これを『潜伏期』といい、例えば、ブドウ球菌の食中毒であれば潜伏期は3時間、腸炎ビブリオの食中毒の場合には6〜24時間、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は2〜3週間、インフルエンザは1〜2日というようになっています。
しかし潜伏期を経ても発病・発症しない場合もあり、これを『不顕性感染』といいます。
インフルエンザの場合はこの割合の率は大きいと言われていて、発熱など症状を呈する患者は、実は全体の約20%ほどと言われています。
ただし、不顕性感染の場合は症状はなくても、その菌やウイルスの保持者(キャリアー)となっているため、他人に自分の持っている病原体を移してしまう可能性があります。
今、人が多い場所への外出の際にはできる限りマスクを着用するようにしましょう、などと口すっぱくワイドショーなどで言われているのはこのためです。
潜伏期は、病原体が宿主に落ち着いて徐々に増殖し、生活圏を広げつつある時期で、その間に生体側は病原体を迎え撃つ準備を進めます。
ですから発病は、病原体と生体が争い出したことの合図ともいえ、その反応で種々の症状が生体に現れることになるのです。
最後に
これで感染症の歴史と大まかな分類や種類のお話は終了としたいと思います。
今後このような形で西洋医学に関連したお話もしていくことがあると思いますが、よろしくお願いします。
次回は感染症の中でも主たるもののお話を予定しています。
それではまた次回、お会いしましょう!
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