発達障害は併発するという事をご存知の方は多いと思います。ですが、それぞれが別々の障害だという認識になってしまっていないでしょうか。実は、これらは全て1つのグループに属する障害なのです。
今回は発達障害の種類を一覧にし、それぞれの特性と行動の現れ方について解説していきます。
発達障害の原因
発達障害とは、明らかな知的機能の障害はないにも関わらず、脳の機能の障害による非定形な発達の仕方を示す事を言います。
つまり脳の発達に凸凹とした差があるため、創造性やコミュニケーション、認知機能などに偏りや歪みがみられ、それらがいわゆる『困った行動』という認識に繋がってしまうのです。
こういった特性を持つことから、周囲の人や環境に合わせることが難しいことが多く、「発達障害とは適応障害のことである」という専門家もいます。
もうひとつは、発達障害は生まれつきのものであるということ。大人になってから仕事でつまずいたり、人間関係がうまくいかなかった時、「もしかして発達障害になったのかも?」と心配することがある人もいるでしょう。
そういった人の相談を医師が受ける場合、その人の幼い頃からの育ち方や困りごと、遺伝を疑って親族の特性などを問診で聞き取ります。
その結果、もし幼い頃から不注意によるミスやコミュニケーションのトラブルなどの困りごとを抱えていたのならば発達障害と診断される可能性はあります。
しかしそれらがなく、大人になってから急に現れた場合は発達障害ではなく、別の精神疾患などの可能性が出てきます。
ところで日本では認知され始めているとはいえ、まだ発達障害に対する理解が浅く、『困った行動』を取ってしまう子供の事を『親のしつけが悪い』としてしまう風潮があります。
前述したように発達障害の原因は生まれつきのものですので、親の育て方が原因というわけではありません。確かに遺伝的な要素も関係していると言われますが、原因を追求することにあまり意味はないのです。
それよりも周囲がそのように思い込んで、例えば子供に対して親がきつく接したりしてしまうことで、子供自身の発達の『二次障害』となりかねません。
ですから発達障害には、家族をはじめとした周囲の理解と関わりが何よりも必要となります。
発達障害の併発とは
発達障害はそれぞれが個別に存在しているわけではありません。それぞれの特性が重なり合って出ることが多く、これを別々のものと思い込んでいるがために『併発している』と思ってしまうのです。
つまり、ADHDの特性を持つだけの人もいれば、ADHDとASDの特性を併せ持つ人もいて、ADHD・ASD・LDの特性を併せ持つ人もいるということ。
それぞれがどの程度かけ合わさるのかは千差万別で、そもそも障害の程度が濃い人も薄い人もいます。
ですから一口に発達障害といっても、特性の現れ方は人それぞれであり、それが発達障害という疾患の理解を難しくしている部分でもあるのです。
発達障害の種類
ここからは発達障害の種類や行動の特性などについてお話ししていきます。
自閉スペクトラム症(ASD)
ASDは主に対人関係の障害であったり、常道的行動パターン、つまり同じ動きを繰り返してしまう障害を持っています。ホルモンのひとつであるセロトニンの不足が関係しているとも考えられています。
ちなみにスペクトラムとは『連続体』という意味で、ひとりでの生活が難しいほど重度の自閉性障害を持つ人から、自己のコントロールに苦手を抱える程度の軽度な人まで、症状に境界線をひくことはできず、連続しているという考え方を言います。
ASDの主な特徴として、次のような行動が挙げられます。
・場の空気を読めない
・人の気持ちを読み取るのが苦手
・ひとり遊びが多い
・何かに対するこだわりが強い
・感覚刺激に対して過敏または鈍感すぎる など
なおアスペルガー症候群も、このASDの概念の中に含まれています。
注意欠如/多動症(ADHD)
ADHDというと、じっとしていられないことや席についていられないこと、乱暴などの特性が主に取り上げられますが、一方で、ぼんやりしていたり集中できないこと、忘れ物を頻繁に繰り返すなどの不注意から起こるトラブルを抱えていることが多いことも特徴です。
幼児期や小学生くらいまでは前者、中学〜大学生くらいになると後者がそれぞれ主な課題として目立つようになってきます。
ADHDの主な特徴として、次のような行動が挙げられます。
・忘れ物やミスが多い
・片付けや掃除が苦手
・ぼんやりすることが多い
・衝動的な行動が多い
・思いついた事をそのまま話してしまう など
学習障害(LD)
学習障害には3つのタイプがあります。
読字障害(ディスレクシア)・書字障害(ディスグラフィア)・算数障害(ディスカリキュリア)
学習障害とは、視力や聴覚に障害がなく、知的な遅れもないうえに、教育環境も整っており、本人が努力しているにも関わらず、文字や数の読み書きや操作(文章を書くなど)著しく苦手な状態を言います。
学習障害も脳の働きの偏りが原因となっていて、「読み」「書く」「計算」に関わる領域の働きに偏りがあるために起こります。
この障害の背景には、表記された文字を対応する音に変換するという脳の働きがうまくいっていない場合もあります。そのため文字を読めなかったり間違えることがあります。
しかし理解する力はあるので、試験問題を読んでもらって耳で聞けば答えられるという場合もあります。
また、言葉は読めるけど計算ができない。または言葉は読めないけど計算はできるなど、特定のことができないことも特徴です。
発達性協調運動障害(DCD)
先にあげた3つの発達障害に合併しやすい障害で、年齢や知的発達に比べて協調運動が著しく苦手な状態を言います。全身を使う粗大運動も、指先を使う微細運動もどちらも苦手。いわゆる『不器用』と片付けられがちになります。
子どものころは運動が得意で活発な子が周りの評価を受けやすいものです。
反対に運動が苦手で不器用さの目立つ子は、それが引き金となって自信をなくし、自己肯定感を下げることに繋がりやすくなります。
最後に
発達障害についてお話ししました。
日本人の発達障害への理解は、米国よりも40年ほど遅れていると言われています。
ということはそれだけ、発達障害を持った子供の親に対して無神経な発言をしてしまう人も多いということ。
この記事を読んでいただいた皆さんには、発達障害について少しでも理解を深めて、そのようなことがないようになってほしいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
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