このほど日本の原子力機構は廃棄される豚骨から作った『高炭酸含有アパタイト』を原子力施設などの浄化に利用できるかもしれないと発表しました。
今回はこのアパタイトと、ストロンチウム90がどのようなものかについてお話しします。
高炭酸含有アパタイトとストロンチウム90とは?
今回製作された高炭酸含有アパタイトは、もともとは骨に含まれる炭酸アパタイトがストロンチウムを吸収するというところから着想を得て開発されました。
ストロンチウムは放射性物質のひとつで、原子構造がカルシウムと似ていることから、体内に入るとカルシウムと同じような振る舞いをします。そのため骨に吸収されやすく、また、カルシウムと似ていることから容易に体外に排泄されることもありません。
さらに水に溶けやすいという性質も持っているため、プランクトンや魚介類の食物連鎖による汚染の濃縮も懸念されています。
ストロンチウムは半減期が長く、骨に蓄積したあと、およそ30年に渡って放射線を出し続けます。
放出されるのはベータ線という強力な破壊力を持ったもので、骨髄の破壊を中心として行い、白血病を引き起こす原因となっています。若年者であれば、骨肉腫など小児がんの原因にもなるでしょう。
そこで自然界に存在するストロンチウムの吸収のため、研究チームは廃棄される予定だった豚骨を原料として、これを加温・加圧したのち、重曹(炭酸水素ナトリウム)の溶液に漬け込んで『高炭酸含有アパタイト』として製作しました。
実験を行なったところ、高炭酸含有のアパタイトは全く処理を加えていない骨のおよそ250倍、吸着材としてすでに利用されている天然のゼオライトと比べても20倍と、非常に高い除染能力を発揮しました。
また、ストロンチウムと同様に有害金属に指定されているカドミウムや鉛に対しても高い吸着力を発揮しています。
最後に
高炭酸含有アパタイトとストロンチウム90についてお話ししました。
世界では年間で、およそ75億トンも動物の骨が廃棄されているといいます。
したがって、このアパタイトにうまく利用できれば、イタイイタイ病などの公害が原因の病気や、福島原発の放射性物質の除染などに大きく活用されることになるかもしれません。
ぜひ、実用化していただきたいところですね。
それではまた次回、お会いしましょう!
コメント