鍼灸治療で使うお灸の種類を解説。実際に使用した私が思うこと

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 今回は鍼灸治療で使う様々なお灸の中でも、私が実際に治療などで使用した時の話をメインに解説していきます。

 お灸について知りたい方の一助となれれば幸いです。

 なお、オマケで学生時代に経験した吸玉の話もありますので、吸玉に興味のある方はお読みください。

灸の基礎知識

 と言っても鍼と同様に灸も基礎的な知識がなければ話がわからないと思いますので、まずはそこから。

お灸の材料

 皆さんはお灸が何からできているか、ご存知でしょうか?

 お灸の原料は、キク科で多年生植物の『ヨモギ』です。

 ヨモギに関しては、1度くらいは草餅などを食べたことがあると思うので、ご存知と思います。

 そのヨモギに種々の工程を加えて加工したものをもぐさと言い、この艾が、お灸で使う材料になります。

 艾はヨモギの葉の裏にある『毛茸』と『腺毛』からできています。

 良質のものは良い香りを発するのですが、これには腺毛に含まれる『チネオール』という成分が関係しています。燃焼時に良い香りがするのもこのためです。

 毛茸はヨモギの葉の裏にある、あの白い毛のことを指しています。

 ちなみにヨモギを採取するのに良いとされる時期は、5〜8月とされます。

 この艾ですが、私も実際に学生時代に作ったことがあります。

 学校の裏に自生していたヨモギを摘んで窓際に干して3日ほど乾燥させ、その葉をすり鉢でひたすらすり潰します。

 すり潰していくと、だんだんと緑色の何かができあがってきます笑

 この時点では、多分まだ乾燥させられてすり潰されたヨモギです。

 だから水を与えれば、もしかして草餅とかにも使えるんじゃないですかね(すっとぼけ)

 その後、ふるいにかけて大まかに不純物を除いてから、唐箕という風を使う独特の装置でさらに不純物を除去し、それを何度か繰り返して完成させました。この不純物を除いていく段階で、黄色っぽいよく見る艾の色になっていきます。

不純物の除去に、本来は唐箕を使用しますが、私が作った時は学校でしたので、何か似たような装置で代用した気もします。

10年くらい前のことに加え、1度きりだったので記憶が曖昧で・・・。申し訳ないです。

あと、すり鉢使ってますが、本来は石臼を使用します。

 不純物が少ないものは良質艾とされ、色は淡黄白で香りが良く、手触りも良くて柔らかく、繊維も細く、燃焼時に熱も低めで、煙や灰も出にくいなどの特徴があります。

 燃焼時の熱が強くないため、直接灸(患者さんの皮膚上に直接艾を載せて施灸する方法)で利用されます。

 一方で粗悪艾に利用価値が無いかというと、そんなことはありません。

 粗悪艾は青臭く、黒っぽい色をしています。基本的に良質艾とは逆の性質があると考えてください。

 熱による刺激が強いため、特別な治療法以外では患者さんに直接使用することはありませんが、主に間接灸(温灸・隔物灸)や灸頭鍼で利用されています。

 自分で作るなら、ふるいにかける回数を減らすなどして不純物をなるべく残すようにすれば良さそうです。

 

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線香の材料

 お灸については理解していただけたと思いますが、これを忘れてはお灸による治療ができません。

 CMで紹介される、市販のせんねん灸のようなタイプのお灸であれば、ライターで着火してツボに配置すれば良いんですが、艾を自身で捻って施術する場合にはそうはいきません。

 線香はタブの樹皮やスギの葉などの粉末を主原料としていて、そこへ着色料や香料などを加えて作られています。

 施術に使うものは、基本的に無臭で灰が少ないものが望ましいとされています。

 また、仏事で使うような細いものでなく、お灸用の線香は太さ3mm程の太くて折れにくいものになっています。

 参考:良質艾と線香(良質艾は自作したものが残っていました。保存環境が良かったためか、湿気しけっている感じもなく、未だにとても良い香りがして驚いています。)

  

私が実際に使用したことのあるお灸

 続いては、私が臨床や学生時代に実際に使用したことのあるお灸の話です。

有痕灸

 有痕灸は患者さんの肌にお灸の痕を残す施灸のことで、患者さんの皮膚に直接、がいシュ(艾を指で捻ったもの)を置いて生体に強い温熱刺激を与えて、その反応を治療に利用するものです。

 

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透熱灸

 良質艾を米粒大くらいの大きさで円錐形に作り、直接皮膚上の経穴や圧痛点などの治療点に施灸します。

 私が初めて臨床で施術したのはまさにこの透熱灸で、女性で指先に冷えのある患者さんで、小指(小腸経の少沢穴)に糸状灸を、熱を感じるまですることを指示されました。

糸状灸→温熱刺激を和らげるために、糸のように細くした艾シュのことです

  

無痕灸

 無痕灸は灸痕を残さない施灸法で、患者さんに気持ちのいい刺激を与えるために行われます。

知熱灸

 透熱灸と同じく、米粒大または半米粒大の艾シュを直接患者さんの皮膚の上に置いて線香で点火し、患者さんが熱を感じたら施術者の指で艾シュを挟むまたは潰して酸欠状態にして消化する施術法です。

 患者さんの気持ちのいいところで止めることができるため、刺激も強すぎずに済み、灸あたりなどを防ぐのにも役立ちます。

 が、透熱灸に比べると、やはり温熱効果は小さくなってしまいます。

 他にも、大きめに作った艾シュを皮膚上に置いて点火し、患者さんが熱感を感じたところで素早く水を入れた灰皿へ取り去る方法もあります。

 ですが注意しないと、患者さんに火傷をさせてしまうことに繋がるので気をつけなければなりません。

 いずれにせよ、知熱灸は患者さんに状態を聞きながら行う施術法になります。

 

温灸

 艾を患部から離して燃焼させて輻射熱によって温熱刺激を与える施術法です。

 学生時代には、艾を和紙などで棒状に巻いて先端を燃焼させ、患部へ近づけて温熱刺激を与える棒灸を作成し使用したことがあります。

 正直な話、棒灸はかなり温かいです。距離によって温度調節ができるのも利点ですね。

 臨床では、台座のついた円筒状の艾を燃焼させる温筒灸を使用していました。

 こちらは種類によって熱さが変わります。元々設定されているものですので、こちらの意思では熱さを変えることはできません。

 ちなみに温筒灸は、おそらく皆さんもCMなどで1度は見ていて、一般にもイメージされる『せんねん灸』のことです。

 ところで棒灸もまた、学生時代に作成して使用していたものの残りがありました。触った感じでは、まだ燃やせそうな感じがします。

 温筒灸については、私が勤めていた治療院で使用していたものと同じものを購入して使用しています。

  

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押灸

 これは先ほどの棒灸を使った別の方法で、和紙を厚めに重ねた上から棒灸を押し当てて、患者さんが熱を感じたら離して別の部位へ移るという施術法です。

 長く押し付けると火が消えてしまうので、予め何本かの棒灸に点火しておいて、ローテーションしながら使っていきます。

参考:棒灸と温筒灸(棒灸は銀鍼と同じく、学生時代に作って実習で使っていたものが残っていました。触った感じは、まだ使えそうです。)

 

隔物灸

 艾を直接、皮膚の上に載せることはせずに燃焼させ、艾シュと皮膚の間に物を置くためこう呼ばれます。

 間に置くもので名前が決められていて、私が学生時代にやったものでは、生姜灸、ニンニク灸、塩灸があります。

 このような特徴から、隔物灸は隔てた物の成分を身体に浸透させるという目的もあるのではと私は考えています。

 例えば、生姜なら体を温めることはよく知られていますよね?

 ですのでニンニクにしろ塩にしろ、艾とともに燃焼することでそういった効果を期待できるのだと思います。

 さて、施術方法ですが、生姜灸は輪切りにした生姜を置いて、その上で艾を燃焼させます。艾シュは小指または母指頭大で行います。

 ニンニク灸は輪切りにしたニンニクのほか、すりおろしたニンニクを和紙に載せ、その上で艾を燃焼させます。

 ちなみに・・・

 使用するニンニクは、中国などの外国産よりも国産が良いらしいです。

 何故なら国産の方が、日本の地脈や龍脈、気候風土といったものに適合していて、何より栄養価も高いため、より治療効果を期待できるからだと、学生時代に先生から聞いたのを記憶しています。

 

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 塩灸はお臍の上に和紙を敷いて、その上に塩を5〜7mm程度盛って、その上で艾を燃焼させます。

 主として腹部に用いられるのがこの塩灸です。

 なお生姜灸やニンニク灸の場合には火傷を起こしやすいと言われているので、施術には注意を必要とします。

 患者さんから熱いなどの声がかかったら、すぐに施術を終了するようにしましょう。

 それでなくとも、常に患者さんに気を配ることが臨床では重要になります。

 

実際に使用したことのないお灸の紹介

 次は私が学生時代や臨床で使用したことはないものの、知識として知っているものを紹介します。

焦灼灸

 これは有痕灸の一種で、主にイボやウオノメ、タコなどに使用する施術法です。

 イボなどの上から局所的に何度も透熱灸をして、その組織を焼き切って破壊し、取り去ります。

 クラスメイトの中には先生に頼んでやってもらっている人も見ました。

 何度もお灸をするので患部は炭化していって真っ黒になるんですが、その後は綺麗に取り去れるので安心してください。

 

打膿灸

 これも有痕灸の一種で、先ほど挙げた特殊な治療法のひとつです。

 小指から母指頭大の艾シュを患者さんの皮膚に直接載せて、それを燃焼させきり、火傷を作ります。

 そしてその上から膏薬を貼り付けて化膿を促します。

 火傷が治るまでには1〜2ヶ月かかりますが、生体の防衛機能を高める目的で行われます。

 ただしこの方法は、お灸の痕が大きく残り、小さな子供や虚弱な人には不適とされ、一部の専門の治療所以外では現在あまり行われていません。

ですが必要な処置とはいえ、個人的には治療に膏薬を用いるというのがグレーな気がするので、私ならたとえ出来てもこの治療法は使わないと思います。

 

艾を使わない灸

 これは各種薬物を治療穴に塗布して、その刺激のみを皮膚に伝えることを目的とする方法です。

 ウルシ灸や墨灸、水灸などがあると授業では聞きましたが、私は実際に使用しているのを見たことはありません。

 

吸玉について

 お待たせしました。え?待ってない?

 私が学生時代に体験した吸玉についてお話しします。

吸玉って?

 吸玉は主に背部(背部兪穴)に用いるものです。

 古来から用いられてきた方法で、背中にガラス製の玉を当てるのですが、この時、アルコールを含ませて線香やライターなどで着火し、内部を真空状態にすることによって背部の肌肉を吸引させます。

 この刺激によって新陳代謝を促し、瘀血などによる血行停滞に対する血流改善や、五臓六腑の機能改善、肩こり・腰痛などを治療する効果を期待します。

参考:吸玉

 画像と異なり、私が学生時代に使ったものは小さなガラス製の壺のような形をしていました。

 これが結構な吸引力を誇りまして。終わった後は肌に真っ赤な痕が残りますが、長くても1週間ほど経てば綺麗に消えてくれるので安心です。

 当時この講習を受けられたのは希望者だけだったので、中々に貴重な体験となりました。

 あとこの時一緒に、アロマオイルを使ったマッサージのやり方も教えてもらえましたね。

 こうやって話すことができて、受けていて良かったと感じています。

 

おつかれさまでした

 これでお灸の基礎の話は終了とさせていただきます。

 冒頭でも言いましたが、お灸について知りたい方の一助となっていたら幸いです。

 それではまた次回、お会いしましょう!

 

 

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