あの未曾有の大震災から、間も無く10年が経とうとしています。同時に発生した原発事故によって、当時は放射能や放射線を被爆して健康被害が出てしまうかもしれないと恐怖を感じた人も多かったでしょう。私もその1人でした。
ですが、人間は慣れの生き物なので、時が経つとその恐怖にも『慣れて』薄れていってしまいます。
だからこそ、今改めて放射能や放射線の被曝の恐怖というものを解説していきたいと思います。
内部被曝と外部被曝、汚染など被曝の種類の違い
本題に入る前に、放射線被曝の種類の違いについておさらいしておきましょう。放射線を受けることを被爆と言います。
外部被曝とは、放射性物質などの放射線の発生源が外にあって、体の外から放射線を浴びてしまうことを言います。これを避けるには、線量の高い場所から離れる、放射線を遮ってくれるコンクリート製の建物等に避難する、などが挙げられます。
汚染とは、衣服や肌に放射線や放射性物質が付着した状態です。この場合は、衣服の洗浄や着替えによって被爆量を減少させられます。
一方で内部被曝は、呼吸や飲食によって放射性物質を直接体内に取り込んでしまったり、付着した放射性物質が傷口から体に入ったりすることで、取り込まれた放射性物質が体内から放射線を出し、細胞を傷つけていくことを指しています。
内部被曝はマスクをしたり、汚染された飲食物の摂取制限等で抑えられます。傷口の場合は、原因となる放射性物質を取り除いてから除染します。
被曝する箇所によっても分類があります。全身被爆と局所被爆です。全身被曝は文字通り、全身に放射線を受けることで、局所被曝は体のある部分に集中して放射線を受けることを指しています。
また、被曝の期間によっても分類があります。放射線の体への影響は、その合計値が同じでも、どれだけの期間で受けたかによって健康への影響度が異なってきます。
急性被爆とは、瞬時もしくは短時間で急激に放射線を被爆することを言い、慢性被曝は長期間に渡って繰り返しあるいは連続して少しずつ放射線を浴び続けることを言います。
どちらの方が健康被害が小さいかと言えば、慢性被曝の方です。これは私たちの体には傷ついた遺伝子を修復してくれる作用があるためで、短時間に浴びた場合にはこれが追いつかないためとされています。
放射能による健康被害
放射線による急性の健康被害の症状は、基本的に一度に多量に受けた場合に起こります。その基準となる量は500ミリシーベルトからで、100ミリシーベルト以下では健康被害の心配はないとされています。
また、全身被爆と局所被爆では、同じ放射線量を受けた場合、もちろん全身の方が健康被害の度合いは大きくなります。
では、全身と局所の症状の違いを見てみましょう。
全身被曝
・500ミリシーベルト→抹消部位の血中のリンパ球の減少
・1000ミリシーベルト→吐き気や嘔吐、食欲不振、頭痛、発熱などを起こす
・3000〜5000ミリシーベルト→放射線を浴びた人のおよそ半数が死亡
・7000〜10000ミリシーベルト→放射線を浴びた全員が死亡
局所被曝
・500〜2000ミリシーベルトが目や骨髄、精巣に被曝した場合→目ではレンズの役割を果たしている水晶体に被曝して混濁を引き起こし(数年かけて白内障となることもある)、骨髄では約1週間で血液を作る造血の機能が低下、精巣では1〜2ヶ月ほどで一時的な不妊を引き起こす
・3000ミリシーベルトが皮膚に被曝した場合→脱毛を引き起こす
・2500〜6000ミリシーベルトが精巣や卵巣などの生殖腺に被曝した場合→1〜3週で永久不妊を引き起こす
・5000ミリシーベルトが目や皮膚に被曝した場合→目では白内障を起こし、皮膚では発赤や紅斑が出てくる
・10000ミリシーベルトが皮膚に被曝した場合→皮膚の急性潰瘍を形成する
放射線のがんへの影響
放射線を受けることで染色体の中にあるDNAが傷つきます。が、体にはこれを修復してくれる機能が備わっているので線量が少なければ修復してくれます。なお一部は修復されないこともありますが、大抵は細胞死を迎えて代謝されます。
しかし、浴びる線量が多かったり、修復されなかった細胞が細胞死を迎えずに変異してしまったりすることで、がん化してしまうことはあります。
放射線を浴びてから、白血病は2年ほど、その他のがんは10年ほど経過してから発病する可能性が高いようです。
子供への影響
大人に比べて子供の方が、放射線に対する感受性が高いということがわかっています。大人と子供ではがん化しやすい部位が異なり、大人は骨髄や結腸、乳腺や肺、胃などで、子供は甲状腺がんや皮膚がんのリスクが高いこともわかっています。
確かに当時、子供の甲状腺がんについて度々話題となっていましたね。
また、被曝した時に母親のお腹の中にいた子供は、生後、精神の発達に遅れが見られるということも報告されています。
たとえわずかな被曝であっても、妊娠初期段階の8週〜15週の間の子供は放射線に対する感受性が高いため、生後に重度の知的障害などを抱えてしまうようです。
一方で妊娠16週〜30週を迎えた子供の場合は少し多く放射線を浴びてもそれほど影響は出ず、1グレイを超えてくるような被曝でなければ障害を発生しないこともわかっています。
つまり、たとえ同じ量の被曝でも、胎児の場合は妊娠の初期か中期以降かによって障害の発生率が異なってくるのです。
最後に
放射線を浴びることによって起こる、様々な健康被害についてお話ししました。
世間はすっかり現状に慣れて麻痺しているようにも見えますが、放射線はいつでも私たちの命を奪うことができるのだと、改めて認識してもらえる一助になればと思います。
それではまた次回お会いしましょう!
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