食品添加物シリーズ第9弾。今回はアナトー色素についてです。着色料として用いられる添加物ですが、その安全性はどうなのでしょうか?
植物由来の天然の添加物『アナトー色素』
アナトー色素は、ベニノキという南米やアフリカが原産の常緑低木の木の種子を覆っている皮から抽出される色素のことです。
その色は黄色〜オレンジ色をしており、主にハムなどの加工肉製品やマーガリン、チーズなどの着色料として利用されています。また、タンパク質と結びつくと赤く変化するという特徴もあるため、煮だこの着色や焼肉のタレなどにも利用されています。
このような色合いを持つことから、原材料欄には『カロチノイド色素』や『カロテノイド』などと表記されることもあります。色のイメージを具体的に例えるならば、ニンジンやカボチャの中身です。
ちなみに、古くはチョコレートの着色料として利用したり、今でも原産地ではボディペインティングや化粧に利用されているほか、原料となる種子を煮込み料理としたり、サフランの代わりの香辛料として使用されているようです。
アナトー色素は本当に安全?
このように植物由来の天然成分によって安全と思えるアナトー色素ですが、食品添加物としては遺伝毒性があるのではないかとの懸念がされています。
遺伝子は細胞中のDNAに暗号として記録されています。このDNAが、外的要因によって傷付つけられると暗号が変化し、遺伝子の突然変異が起こります。このように、細胞のDNAに直接作用して傷付ける可能性があり、遺伝子の突然変異をもたらし、それが原因となって発がんを起こす物質を「遺伝毒性発がん物質」といいます。
出典:農林水産省
つまり、アナトー色素を継続的に摂取することによる発がん性が懸念されているということです。
また、原産地の環境は水銀によって汚染されていることもあり、原料となるベニノキが水銀で汚染されてしまうのではとの懸念もありました。
これは実際に検査をしたところ、微量ながら水銀が検知された製品があったため、今後も引き続き検査を行っていく方針で決定となりました。
水銀は脂質に溶けやすい毒物のため、神経細胞の障害をもたらすと言われています。特に妊婦が摂取を続けた場合、胎児に何らかの影響を及ぼすとされています。
さらにアナトー色素そのものは無毒であっても、他の添加物との反応によって毒性が現れるかもしれないとの指摘もされています。
当サイトでも以前に書いた『亜硝酸ナトリウム』はその良い例で、添加物そのものはそれほど危険性はなくとも、肉類に含まれるアミンと反応することで毒性のある物質に変化するというものがありました。
ちなみに現在の日本では、食肉などの生鮮品やお茶、昆布、海苔などを除いてアナトー色素の使用限度は特に定められていません。
ではなぜ、これらが除外されているのかというと、肉類などはその色味から鮮度を判断します。ところが着色料を使うことによって発色が良くなり、鮮度の誤認が起こる可能性があるからです。
最後に
アナトー色素についてお話ししました。
いくつか安全性への懸念はあるものの、比較的安全な添加物と言えるのではないでしょうか。
ところでこんな逸話があります。
大昔のマヤ文明の人たちは、すでにこのアナトー色素を利用していたらしく、彼らを初めて見たヨーロッパの人々は口元についた赤い色素を血液と誤認し、「食人をしているのではないか」と驚いたそうです。
面白い勘違いエピソードですよね。誤解されたあとのヨーロッパ人のマヤ人に対する反応も気になるところです。
それではまた次回、お会いしましょう!
ちなみに前回の添加物についてはこちらです。よければお読みください。
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