四診法の問診で発熱 汗 食欲 味覚 口渇などの異常を診よう!

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 今回も引き続き、四診法の問診で診るべき具体的なポイントについてお話ししていきます。

 前回はこちら↓

問診って?

 問診とは患者やその家族に、現在かかっている病気の状態や日常生活の様子などを尋ね、診断することを言います。

 まず患者の主訴、次に発病時期、原因、発症からこれまでの経過、既往歴などを聴いて、他の症状などの情報を注意深く質問し、病気の原因や病気の場所を探します。

 他にも主訴とは関係のなさそうな飲食、住んでいる場所や睡眠時間などの生活状況、性格の特徴などの情報を集めることも重要です。これらの点は、西洋医学の問診とはやや異なります。

これは東洋医学の病理の考え方の違いで、内因や外因などの原因から臓腑経絡の変動が起こり、その患者の総合的な変化から病気になると考え、患者の主訴はその結果から生じたものと考えるからです。

 例えば主訴が膝の痛みの場合、どの臓腑経絡の変動によって起きたのかを調べることが診断の目的になります。治療目的も、患者の臓腑経絡などの総合的な変動を調整することにあるためです。

ですので、臓腑経絡などの変調が調整されれば、自ずと主訴も解消されます。

 東洋医学、それも鍼灸の治療は体の何らかの変調を鍼や灸によって整え、身体が本来持っている自然治癒力を向上させて治すことにあります。

そのため問診の仕方も、主訴を追求するだけではなく、どの臓腑経絡の変動なのか、寒熱・虚実はどうかなどを明確にするための問診になるので、主訴とは関係のない質問も多くなります。

 

寒熱

 寒熱は悪寒発熱のことを言い、『悪寒』は寒気のことであり、暖かくしても寒気のするものを言います。

 また、暖かくすれば寒気がなくなるとともに、風に当たったり外気を嫌うことを『悪風』と言います。

 なお悪寒・悪風ともに急性症状で、悪風は悪寒に比べると症状は軽いとされています。

 寒熱の問診時は、まず患者に悪寒発熱の症状の有無を尋ねます。

 例えば寒熱のある時は、悪寒と発熱が同時に出現するのか単独で出現するのか、他に寒熱の程度や出現時間、特色およびそれに伴う症状などを尋ねる必要があります。

 臨床では、次のような寒熱がよく見られます。

 

悪寒発熱(外感発熱)

 悪寒と発熱が同時にあるものを悪寒発熱と言います。悪寒が強い場合、外感病の初期のことが多いとされます。外感発熱は外邪(主に風寒や風熱)が侵入して正気と戦うことで引き起こされます。

 風寒による表証では悪寒が重く発熱が軽くなり、風熱の表証では発熱が重く悪寒が軽くなります。

 表証の寒熱の程度は病邪の性質と関係あるだけではなく、正気の盛衰とも密接に関係しています。一般的に外邪も正気もともに強ければ悪寒も発熱も強くなり、逆の場合はどちらも弱くなります。

 外邪が盛んで正気が弱い悪寒が重く発熱が軽くなりますが、治りは悪くなります(体の抵抗力が弱いため)。逆の場合には悪寒も発熱も起こりません。これを『外感せず』と言います。

 

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但(たん)寒不熱(寒証の症状)

 寒気はするが発熱のないことを言い、寒邪の侵襲や陽虚で温煦機能が低下すると起こります。

 外感病の寒邪によるものでは温めても寒気は取れませんが、陽虚では軽減します。

 

但熱不寒(熱証の症状)

 発熱はあるが悪寒はなく、悪熱のあるもののことを言います。一般的に裏熱証で多く見られます。

 悪熱→暑がって温熱を嫌うこと

 

その他

 発熱の程度や時間、特徴などによって次のいくつかの熱型があります。

熱の種類

・壮熱→高熱が続き、悪熱して悪寒のないもの。風寒が裏に入ることで化熱したり、風熱が裏へ入って裏熱証になると起こる。

正気が盛んで邪気が強いほど高熱となる(抵抗力があるほど熱が出る)。多汗や煩燥、口渇などの症状を伴うことが多い

・潮熱→毎日一定の時刻になると発熱を繰り返すもの。一般的には午後の発熱が多い。

代表的なものは次の通り。

 日晡にっぽ潮熱→午後3時から午後5時の間。この時刻に発熱が著明になったり、熱が強くなる。腹部が硬くなり、張って痛むほか、大便秘結を伴うものは胃腸の燥熱と考えられる

 夜間潮熱→夜間に発熱が著明になるもの。五心煩熱や骨蒸発熱(骨の中から蒸すような熱感を自覚的に感じること)を伴うものは陰虚による内熱で起こる

・往来寒熱→悪寒と発熱が交互に現れるもの。正気と邪気が半表半裏で争うために起こり、半表半裏証の特徴

 半表半裏証→病が表を通り過ぎて裏に入っていない状態を指す。代表的な症状は往来寒熱・胸脇苦満・口苦・眩暈など

・長期微熱→発熱日数が比較的長く、熱は正常な体温よりもやや高い程度か、患者が熱があると感じるが、体温は高くないもの。

気虚による症状を伴う『気虚発熱』と陰虚症状を伴う『陰虚発熱』がある。他に、オ血停滞によるものもある

 

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 汗は心の液であり、陽気が津液を蒸化し、体表から出たものです。

 汗の病変は外感病と内傷病のいずれでも見られます。

 汗の状況を尋ねる際は、まず汗の有無、ついで汗の出る時間、部位、量などを尋ねます。

 よく見られるものには次のようなものがあります。

汗の病変について

・表証の汗→無汗は表実証、有汗は表虚証で見られる

・自汗→何もしなくてもいつも汗が出ていて、活動後に一層ひどくなるもの。気虚や陽虚で多い。そのため精神疲労や気力減退、息切れなどを伴う

・盗汗→寝汗のこと。陰虚で起こることが多い。そのため五心煩熱や不眠、口や咽頭の乾きを伴う

・大汗→汗が多量に出ること。実熱では高熱・煩渇・脈洪などを伴う。

 危篤状態で生命が途絶えようとする時に出る大汗は、『絶汗』や『脱汗』という

・頭汗→汗が頭部に限定して出るもの。上焦の邪熱や中焦の湿熱により起こることが多い

 

飲食

 口渇や飲水、空腹感、食欲、口味、五味などを尋ねて臓腑経絡、中でも特に脾胃の機能状態を診ます。

 

食欲について

・食欲不振

 虚証→脾胃気虚で多く見られる。顔色が悪く、倦怠などの症状を伴う

 実証→湿が脾胃に影響して脾の運化が滞ると起こる。胸悶、腹脹、湿による体の重だるさなどを伴う

 

えん(料理の匂いを嗅ぐのも嫌がる)

 傷食→胃のつかえ、腹脹、腐食臭が上逆するなど。食滞や食積と同じ

 妊娠→悪心や嘔吐を伴う。あるいは酸っぱいものを欲しがる

 脂っこいものが食べられない→肝胆の湿熱で多い。胸脇苦満を伴う

 

・消殻喜飢→食欲旺盛で、食べてもしばらくするとすぐに空腹感が起こるもの。

 胃熱または胃火によって消化機能が亢進するため起こることが多い

 

・空腹感はあっても食欲がない(胃陰虚証)

 →胃陰の不足で虚熱が生じて起こることが多い。口乾、舌質紅、舌苔少などを伴う

 食べる量の増減は、特に内傷病においてその予後を判断する上で重要な意義があります。

 食欲がなくて食べていなかった者が、食欲が出て食べられるようになったならば、これは胃の気が次第に回復してきているということで予後は良好となり、逆に食欲のあった者が次第に食べられなくなるということは、脾胃の機能が低下しているということを表します。

 また、慢性疾患や重病、長期に渡る昏睡状態などで食べていなかった者が突如として暴飲暴食し、症状が軽快したかに見えることがありますが、これは脾胃の気が絶えようとしている前兆で除中じょちゅうと言い、多くは死の直前に見られます。

 

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口味

 口味は口の中の異常な味覚を言います。

 これを読んでくださっているあなたも経験がありませんか?

 何も食べていないのに口の中が酸っぱかったり、苦かったり、甘かったり・・・。私もたまに経験します。

 苦い時は熱証肝胆に熱がある場合に現れやすいとされます。

 食べても味がしないことを『口淡』と言い、これは脾胃の気虚や虚寒で現れやすいとされます。

 また口の中が甘く粘るもの脾胃の湿熱で現れやすく、塩辛いものは腎熱で現れやすいとされ、酸っぱいのは食滞(西洋でいう消化不良)で現れやすいとされています。

 

五味

 偏った食事の場合は、飲食の取りすぎの場合でも不足の場合でも、五味と五臓の関係で判断することができます。

 現代では食生活が偏ることが多く、特に甘味と塩味を取りすぎると言われていて、反対に苦味や酸味は少ない。そのため脾や腎の異常をきたしたり、心の異常をきたしたりすることが多いとされます。

 甘味を取りすぎて脾に異常が出たなら、それを控えなければなりませんし、苦味が少なすぎて心の異常が出たなら苦味のある食物を摂取しなければなりません。

そのように五味を均等に摂取するのが健康の秘訣と言われています。

 もし酸味を感じないなど、五味のどれかの味がわからないような場合は酸=肝など、五味と五臓の関係から特定の臓の異常も察知することができます。ですが時に、酸でも心や脾の異常であることもあります。

 五味の考え方は赤いものは心に、黄色いものは脾に、というように臓器と色との五行的な親和性から生まれています。仮に腎に入れたい場合は、焦がして黒くすると良いでしょう。

 

口渇

 口渇の有無は津液の盛衰および輸送の状況を反映します。

 一般的に口渇がない場合は津液を損傷しておらず、健常者か寒証、湿証によく見られます。対して口渇がある場合は津液を損傷していると考えられます。

 また、痰飲や瘀血などによって津液の輸送や代謝が悪くなって口渇が起こることもあります。

 口渇の問診の際は、その特徴や飲水の状況などを尋ねます。

 口渇があって多飲するのは熱証

 口渇があり、飲みたいと思っても飲むとすぐに吐き出し、さらに小便不利があるのは痰飲

 口渇があり、口を潤すと気持ちいいが飲みたくないのは瘀血

 口渇があってよく飲むが、それ以上に小便が多いのは消渇しょうかつ

消渇→口渇が強く、水をよく飲み、多尿であり、食べても太らない病態のこと。現代病では糖尿病・尿崩症・腎不全のうち、特に糖尿病が考えられる。

この病態には上消、中消、下消があり、上消は肺消ともいい、口渇・多飲、中消は胃または脾消といい、多色しても空腹感があり、痩せていく(消殻喜飢)、下消は腎消ともいい、多尿をそれぞれ主症状としている

 

おつかれさまでした

 以上で問診編その1は終了とさせていただきます。

 次回もまだまだ引き続いて四診の診察法を解説していきます。

 それではまた次回、お会いしましょう!

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